愛たい夜に抱きしめて




「いやあの、でも、わたしはお兄さん?を軽く手当してタクシーに放り込んだだけですので、そんなお礼を言われるものでは……」

「タクシー代一万円を払っていただいたのに、お礼を言わない方が失礼かと」




……あ、そんなこともしてた。

家の場所が明確にわからなかったけど、さほど遠くないことはあの不良サマから聞いていたので、一万円あれば足りると思って先に払っていたんだった……。




「ほんとうに、もう忘れていたことなのでお気になさらず……」




翌日、起きてわたしが一番最初に思ったことは、お腹すいたな、なんていう数時間前に起きたこととはなんら関係ないことだったし。




「そういうわけにもいきません。あなたに助けていただけなければ、兄はあそこで生き倒れていたかもしれませんし」

「それはさすがに……………、ありえますね」



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