愛たい夜に抱きしめて




しきりにチラチラ視線をやっていて、気になって気になってしまいにはそわそわし出している。


それを見ていたら、わたしもなんだか落ち着かなくなって、くしゃりと菓子パンが入っていた袋を丸めて、立ち上がる。


その音を耳ざとく聞いた紫昏くんが、ちらりとわたしを見上げたタイミングで、とんとん、と氷昏の机を指先で叩いて、その指を今度は自分へと向ける。

どうやら、そのジェスチャーで伝わったみたい。



紫昏くんは、本当に申し訳なさそうに眉を下げて、目で謝れる境地に達していた。




「……なんだかなあ」



こんなこと、するタイプではないのに。

人探しも、得意ではないのに。



ただ、すごく困りきった顔をしていたから、なんとなく、手を貸してあげたくなった。


なんにも持ってない、手を。




「……氷昏見つけて、さっさとかえろ」




そう誰にともなく呟いて、とりあえず校舎をぐるっと一周見回ってみることにした。



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