愛たい夜に抱きしめて
そして、数分後。
「……氷昏、何してるの?」
「……あ、見つかった」
氷昏は、窓の下に隠れるように、裏庭に潜伏していた。
日も当たりにくくて、そもそも裏庭と言っても花壇も何もない芝生だけがあるから、不人気の場所。
だから、氷昏以外誰もいない。
「……漫画読みたくて」
「それなら教室で読めばいいのでは……」
「学校に持ってきちゃいけないって、紫昏に言われそうで」
「……気持ちはわからなくもないけど」
片手には購買でゲットしたのであろうクリームパン。反対には、分厚い漫画雑誌。
「……紫昏くんが心配してたよ」
「……うん。知ってる。けど、紫昏はおれがいない方が、ちょっとは気が抜けるだろうから。予鈴鳴ったら帰る、って連絡しといて」
「……あのね、氷昏。わたし、紫昏くんと連絡先の交換なんてしてないよ」
「……え、」