愛たい夜に抱きしめて
結果、自らぽちぽちと紫昏くんに連絡する羽目になった氷昏は、連絡先ぐらい交換しといてよ……なんていう、わたしにはどうにもできない不満をもらす。
「紫昏くんはわたしの連絡先なんていらないよ」
「……いると、思うけど」
「なんで?」
「……なんかあった時、すぐ確認できるし」
「わたしは氷昏みたいにいきなり姿消したりしないよ……」
氷昏のテコでも動かなさそうな空気を感じ取って、連れ戻すことは諦める。
諦めることが、わたしの特技だから。
「……それ、面白い?」
「え?……あー、うん。この話が面白い。妖怪全身黒タイツが出てきて」
「なんて?」
「有名なミステリー?漫画のスピンオフみたいで、世界的犯罪都市に死神がいて、そいつを狙う妖怪全身黒タイツが主人公の話」
「いやそっちじゃなくて、妖怪全身黒タイツの説明を……」
「ちなみに、ミステリー漫画じゃなくコメディ漫画」
「もはやカオスが渋滞してる……」