愛たい夜に抱きしめて
説明してもらうことも諦めて、嬉々として語る氷昏の言葉に耳を傾けることにシフトする。
「……きよらも、一緒に読も」
「え?わたしはいいよ」
「でも、廊下に立って見下ろしてたら疲れるよ。よし決定」
「わちょ、」
窓の外からぐいぐい腕を引っ張ってくるから、危ないのなんの。
仕方ないから、よじよじと窓枠を乗り越えて、氷昏があけてくれたスペースにちょこんとおさまる。
「はい、これ」
「待って漫画雑誌2冊も持って来てたの……」
「ん。あ、そっちには、おれがさっき言った妖怪全身黒タイツの話は載ってないから」
「じゃあなぜわたしにこれを渡す……」
一応ひとこと付け加えるけど、氷昏はマイペースの極地に至っている人物なので、効果などゼロに等しい。
でも、言わないと気が済まないから。
「読み終わったら気に入ったやつ教えて」
「……わかった」