愛たい夜に抱きしめて
ぺらり、と最後の1ページをめくり終えたところで、まるでそれを待ち望んでいたかのようにタイミングよく声が落ちて来た。
「きよら、読み終わった?」
「あ、うん」
「そっか。どれがいちばん面白かったとか、ある?」
そう問われて、自然と、指がパラパラと前のページに入り込んで。
「……これ、かな」
「ああ、魔王城にさらわれた姫という名のはさみ魔物が快眠を求めて彷徨い歩く話か」
「い、言い方が……。それに、はさみ魔物っていう設定はなかったと思う」
「どっかの話でそう紹介されてた気がするけど」
開いた漫画ページを覗き込んでいた氷昏が突然くるりと振り向くから、その距離の近さに思わずびっくりした猫のように固まってしまう。
「それで、どこが面白かった?」
「……え、ええっと、お姫様なのに大きいハサミを自在に扱えるところとか、あと爆弾常時装備してるところとか。いろいろカンストしてて面白い。あとそれに対しての周りの反応」
「ああ。あの爆弾、何かの拍子に爆発して姫が死なないか心配」