愛たい夜に抱きしめて
またもや斜め上にズレたことを申している氷昏。
今回は突っ込まないでおこう。
「その漫画、うちに全巻あると思う」
「え、そうなの?」
「うん。よかったら読んで。あと妖怪全身黒タイツの話もおススメ。これも全巻そろえてる。リビングの共同本棚にあるよ」
いつになく饒舌に語る氷昏。
もしかして、漫画好きなのかな。
「明日はまた別の出版社の漫画雑誌持ってくる」
「堂々と校則違反をおかす予定発言は控えよう?」
「今更ひとつやふたつおかしても大差ないよ」
「校則破り常習犯の言葉……」
……まあ、そうかも。
今更、違和感のひとつやふたつ、新しく見つけても大差ない。
「……じゃあ、今度借りて読んでも、いい?」
距離を広げようとしたら詰められて。
下がろうとしたら引き止められる。
……だったらもう、諦めてしまおう。
「ん。いーよ」
ニッコリ微笑むこの兄弟に、絆されかかっているという現実を。