愛たい夜に抱きしめて
にっこりと微笑んでいる檪さんに、たらりと冷や汗が落ちる。
なんて返せばいいのか、正解がわからずに、あはは、そうなんですね、なんていうバカみたいな常套句が口から飛び出た。
……いや、そうなんですねって一体なに?
ここ受け流しても大丈夫なところだった?けど、突っ込んでみたらあとで背中かから刺されたりしない?
何が本当で何が嘘なのか全くわからず。
その後、近くを通った店員さんに、檪さんが追加注文をしたことにより、ますます帰るに帰れなくなった。
「すみません。勝手に注文してしまって。ケーキはお好きでしたか?」
「あ、はい……。モンブラン以外なら比較的なんでも……」
「モンブランはダメなんですか?」
「わたし、栗アレルギーで……」
「そうなんですか」
世間話まで始めてしまう始末。
もうこれ、わたしには対処不可なんですが……。
「乃坂さん、敬語は取ってもらって大丈夫ですよ。僕のことは檪でも、紫昏でも、なんならお前呼びでも構いません」
「い、いやいやいやいやっ、さすがにそれは……!!」