愛たい夜に抱きしめて



にっこりと微笑んでいる檪さんに、たらりと冷や汗が落ちる。


なんて返せばいいのか、正解がわからずに、あはは、そうなんですね、なんていうバカみたいな常套句が口から飛び出た。


……いや、そうなんですねって一体なに?

ここ受け流しても大丈夫なところだった?けど、突っ込んでみたらあとで背中かから刺されたりしない?



何が本当で何が嘘なのか全くわからず。

その後、近くを通った店員さんに、檪さんが追加注文をしたことにより、ますます帰るに帰れなくなった。




「すみません。勝手に注文してしまって。ケーキはお好きでしたか?」

「あ、はい……。モンブラン以外なら比較的なんでも……」

「モンブランはダメなんですか?」

「わたし、栗アレルギーで……」

「そうなんですか」




世間話まで始めてしまう始末。


もうこれ、わたしには対処不可なんですが……。




乃坂(のざか)さん、敬語は取ってもらって大丈夫ですよ。僕のことは檪でも、紫昏でも、なんならお前呼びでも構いません」

「い、いやいやいやいやっ、さすがにそれは……!!」


< 8 / 75 >

この作品をシェア

pagetop