初恋


『あ…夏実』


―――…彼女だ。

直感でわかった。


清水くんを呼び捨てで呼んだことと、
……清水くんの…笑顔。



さっき自分に見せた笑顔とは、
…全然違った。



泣きそうになる。



『純也、帰らないの?』

『生徒玄関で待ってて。
すぐ行くから!』


明らかに恋人同士の会話だと、思った。


夏実と呼ばれた彼女は、あたしに気付くと、軽く会釈してくれた。

いい子そうだな…。



姫芽に、一緒にいるとこを見られた。
あたし……ちゃんと笑えてたかな…。



『……』

『で、田口さん…だっけ?
なんか話あるの?』

『……んーん。
いいよ。
彼女のとこ、行って。
呼び止めて…ごめんね』

『…そっか。
じゃあ、またね!!』




………。


またね…か…。



< 86 / 99 >

この作品をシェア

pagetop