初恋


「………」


あたしは、なにも言えなかった。

励ましてあげたいという気持ちはあった。

だけど…変に同情して、莉央のすべてをわかった気でいたくなかった。

――あたしには、莉央の気持ちがわからないから…。



「ごめんね莉央……。
なにか言いたいって思うけど、
…なんて言ったらいいか…、
わかんないの……」


あたしは正直に言った。

莉央は呆れたように、少し笑って、
「いいよ、話聞いてくれただけで充分」
そう言った後、小さな嗚咽を漏らしながら、泣いていた。


あたしは黙って莉央の背中をさすった。

今、あたしが莉央にしてあげられることはこれくらいしかない…。




恋は、どうしてこんなに
人を惑わせるのだろう。


ただ好きなだけなのに、好きな人には自分じゃない、好きな人がいる。

そのツラい気持ちを、
あたしが理解することができるのは、
もう少し後のお話……



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