eternity~the other side of F ~
12.鬼姫様と初集会
風紀委員会による特別全校集会。
わたくしが風紀委員長になって初めて開いた特別全校集会。
テーマは夏にもとない制服の着崩し注意。
弁論者は羽藤柳也というわたくしと同じ1年生。
なぜ彼がこのような全校の前で弁論をすることになったかと言いますと。
風紀委員会を愚弄したから。堅苦しいだけの集まり、実績があって立派なのかもしれないが俺ならもっと簡単にやってのけると言い放ったからです。
権限が与えられてからの風紀委員会の歴史は意外と短い。
それでもわたくしは風紀委員会委員長としての誇りをもっております。
風紀委員会の愚弄はわたくしだけではなく先輩への愚弄と同義。
だからわたくしは言いました。
「そこまで言うのでしたら、やってみなさい」と。
「皆様、わたくしは風紀委員会委員長の三枝詩依です。本日はお忙しい中この集会にお時間を割いてくださること心よりお礼申し上げます。またそのために貴重な授業時間を割いてくださった先生方にも感謝の意を表します」
「では皆様の貴重なお時間を奪うことは忍びないのでさっそく始めさせていただきます。1年B組羽藤柳也さん壇上までお願いいたします」
「1年B組羽藤柳也です。さっそく本題に移りたいと思いますが、男子生徒に問いたい。女子のパンチラや制服から覗き見える下着は好きか。当然、俺は好きだ!だがあからさまなものはよろしくないと思う」
体育館内がざわめき始める。
「おい、あいつを止めさせろ、セクハラで訴えてやる」
生徒指導の先生が壇上に上がろうとしてくる。
それをわたくしはそっと静止させる。
「お静かに!生徒の皆様、先生方も静粛に!この集会は風紀委員会の権限で行われております。すべての権限はわたくしにあります」
「ただこいつの発言はセクハラで・・」
「そのようなことは百も承知です。先代や先々代がどうだったかはわかりませんが今の風紀委員長はわたくしです。セクハラ発言をしたからと発言を止めるのではなく、すべての主張を聞いた後に判断すれば良いと思いませんか」
「ですが、これでは学園の規律が・・・」
「ではお聞きます。貴方は全校生徒の前で発言出来ますか?彼、羽藤柳也という人物は1年の身でありながら言葉を選ばず恥を恐れず発言しております。2つ上の先輩や先生方もいらっしゃる中で。それならば最後まで話を聞いてあげても良いのではないでしょうか。判断はその後ですればよいのではないでしょうか。処置と処遇はすべての話を聞いた後でいたします。権限のあるわたくしがそう考えているのです、ですから皆様もお静かに傾聴するように!」
しーんと静まり返る。
堅物と思われているわたくしの意外な発言に体育館は静まり返る。
同じ風紀委員会のメンバーでさえ、有無を言わせない圧力に何も言えないでいました。
「委員長、ありがとうございます。ではお話を続けさせてもらいます。皆様は萌という言葉を知っているでしょうか。オタクの世界ではわりと有名な言葉。オタク世界では萌と言う人もいる。
萌とは何か?これは非常にあいまいなもの。可愛い女の子のこと?恥ずかしがって照れる仕草?健気にも一生懸命姿?
違う!
可愛い女の子に対しては可愛いと表現すればいい。恥ずかしがって照れる仕草は、可愛いし尊いと表現すればいい。一生懸命のその姿もはかなげ、可愛い、尊いと表現すればいい。
なら萌とはいったい何なのか?
俺の中での定義にはなるが萌とは見た目に対しての言葉ではない。
こみ上げてくる情動、湧き上がる情動それこそが萌だと俺は思う。
萌とは無理に押し付けるものではなく、ひけらかすものでもない。
仕草の1つ1つに後からついてくるものだと俺は思う」
「(・・・本当によく語る方ですね)」
「これから夏になり教室は暑くなる、暑くなれば当然服の着方はいい加減になる。
それは仕方ないかもしれない。だが女子生徒のみんなも知ってほしい。
人は簡単に手に入るものには興味がなくなる。
いつでも手に入るもの、いつでも見られるものの価値というものは低くなってしまう。
しかし手に入らないとわかっているものも手に入れたいと思えなくなる。
価値とは手に入りそうで手に入らないもの、ぎりぎりのせめぎあいこそ大切だと思う」
「何が言いたいかというと主張は簡単だ。学園の男子生徒を魅了するつもりなら見えるか見えないかのぎりぎりのところ、慎ましさをこめてこの夏を過ごしてほしい、これが俺からの主張である」