忘れたまんまの君がポケットに入れていたのは青い日の恋かもしれないと先生は云った
おかえり。
サユside
同窓会は、
夕方早めに始まる時間。
普通なら最寄り駅に近い場所の
店とか、
ホテルの会場とかを借りる
と思うのに、
ユカのEV車で向かったのは
町内体育館前だった。
「体育館の前に居酒屋って、
考えてるね。やっぱり打ち上げ
とか使うから、いいかも。」
繁華街があるわけでもなく
飲食店が多いわけでもない町で、
限られた商店通りや、
駅前になら
ようやく店が並ぶ土地柄。
車で観光に向かう他県客を狙ってか、
国道沿いには郊外店舗が、
いくつかある程度。
人が集まる場所は限られている。
「ここさ、元野球部の男子が、
店してるんだよ。だから会場
にしたみたい。2階だよ。」
体育館の駐車場にEV車を停めて、
ユカが建物を指さす。
体育館の駐車場向かいに、
2階建ての飲食棟が並んでいた。
元野球部ならではの彗眼か、
他県の交流大会で
毎週末賑わう、数少ない場所が
町内グラウンド併設の体育館。
「お盆の夕暮れかあ。」
久しぶりの故郷の空気を
馴染ませる様に、
オレンジの灯りが眩しい
体育館を眺めながら
深呼吸してみた。
見ると
2階に上がる階段の脇で、
長机と扇風機が出されて
わざわざ
受付の元女子が2人で
座っている。
『受付チェックしていって
くださーい。名札もねー。』
誰かの伝手なのか、
野外の大型扇風機が
足を広げて設置しているお陰で、
受付で少し涼んでみる。
山や海から夕凪の風が
少しはあるとはいえ、
お盆の暑さは
夕方近くなっても蒸してくる。
「居酒屋って言うから、もっと
適当かと思ったけど、ちゃんと
名札とか、あるんだ、、」
何気なく、受付の2人の
知らない顔だと思いつつ、
わたしはユカに話して
リストにチェックを入れようと
してから、
手を止めてしまった。
「・・・」
隣で同じ様にユカが、
リストに印刷された旧姓に
記しを付けると、隣の欄に
今の姓を書いて、
名札をもらう。
「名札には、今の名前を横に
書くってのでいいのー?これ」
そしてユカは旧姓が付いた
名札の空欄に、今の姓を
油性マジックで記入出来ると、
自然と
胸元に名札を着けた。
『会費前払いだから。』
わたしは
受付係の胸元をチラ見する。
2人とも、2つの名前が
並んでいた。
仕方なく
どちらの欄も空欄にした。
チェックをして、
名札を腰元に
付ける。
『名札つけたら、上あがってー。
席は決まってないでーす。』
受付係は
会費を受け取りながらも、
わたしの言いたげな顔に
気も留めず、片手で
上への階段を示してくる。
「サユ、どうする?あまり早いと
ほら、席とか、ヤバくない?」
わたしが
戸惑って見えるのか、
ユカは小声で聞いてきた。
「でも、上がらないと変に思われ
るんじゃない。上にもお店ある
なら、ちょっと時間潰そう。」
わたしは1度ユカの顔を
見つめると、
今度は少し考えて
居酒屋以外も見えている、
2階の店舗を指指す。
隣の1番端っこに
喫茶店の看板が上がっていた。
「よし!それ、いい。じゃ、
始まるまで、あそこに居よ!」
ユカと2人で階段を上がった。
受付には、自分達の後ろには
まだ人がいないが、
会場になる居酒屋からは、
笑い声が漏れ聞こえる。
『カランカラン♫』
すでに賑やかさを仄めかす
居酒屋の前を通り過ぎて、
奥の喫茶店のドアを開けた。
「ここも、はじめて。」
店内は
落ち着いたアンティーク調の
内装になっていて、
窓にはステンドグラスなシートが
施してある、
「だって、この建物自体、
あたしが短大行ってる
頃に出来たもん。」
「じゃ、はじめてなわけだね。」
シールのせいで、
外を隠れて伺う事が
出来そうだった。
これなら、
ヴィゴが来たらすぐに分かる。
さっきの受付で、
リストがチェックされて
いないのは確認済み。
「って言っても、そんなに
こないけど。喫茶店なんか
何年も来てないし。」
ユカは、
ドサリと木製の椅子に座ると、
メニューを手にする。
「子供いると、なかなかだよね。」
メニューを眺めてユカに笑う。
「ファミレスとか、フードコート
ね。今日は子供もいないし、
アイスにしようかなー。
ソーダーフロートで。」
そして、
学生時代と同じメニューを
見つけると
わたしにメニューを回した。
かと思えば、
出し抜けに
「ね、サユ、ナガレも来るよ。」
アイスチャイを頼む
わたしに向かって、ここで初めて
ユカが
ナガレの名前を出してきた。
ユカに会って
今までで、
初めて聞かれた。
「サユはさ、ナガレとは、、
部屋、どうする?気にする?」
出されたオシボリで、
手を拭いながらユカが、
探るように伺ってくる。
気が効かないようで、
サユは察するところは察していた
のだろうか。
実は、
さっきのリストで確認して、
少し躊躇ったのだ。
そこには早々に
瀬速ナガレ→✔ されていた。
夕方早めに始まる時間。
普通なら最寄り駅に近い場所の
店とか、
ホテルの会場とかを借りる
と思うのに、
ユカのEV車で向かったのは
町内体育館前だった。
「体育館の前に居酒屋って、
考えてるね。やっぱり打ち上げ
とか使うから、いいかも。」
繁華街があるわけでもなく
飲食店が多いわけでもない町で、
限られた商店通りや、
駅前になら
ようやく店が並ぶ土地柄。
車で観光に向かう他県客を狙ってか、
国道沿いには郊外店舗が、
いくつかある程度。
人が集まる場所は限られている。
「ここさ、元野球部の男子が、
店してるんだよ。だから会場
にしたみたい。2階だよ。」
体育館の駐車場にEV車を停めて、
ユカが建物を指さす。
体育館の駐車場向かいに、
2階建ての飲食棟が並んでいた。
元野球部ならではの彗眼か、
他県の交流大会で
毎週末賑わう、数少ない場所が
町内グラウンド併設の体育館。
「お盆の夕暮れかあ。」
久しぶりの故郷の空気を
馴染ませる様に、
オレンジの灯りが眩しい
体育館を眺めながら
深呼吸してみた。
見ると
2階に上がる階段の脇で、
長机と扇風機が出されて
わざわざ
受付の元女子が2人で
座っている。
『受付チェックしていって
くださーい。名札もねー。』
誰かの伝手なのか、
野外の大型扇風機が
足を広げて設置しているお陰で、
受付で少し涼んでみる。
山や海から夕凪の風が
少しはあるとはいえ、
お盆の暑さは
夕方近くなっても蒸してくる。
「居酒屋って言うから、もっと
適当かと思ったけど、ちゃんと
名札とか、あるんだ、、」
何気なく、受付の2人の
知らない顔だと思いつつ、
わたしはユカに話して
リストにチェックを入れようと
してから、
手を止めてしまった。
「・・・」
隣で同じ様にユカが、
リストに印刷された旧姓に
記しを付けると、隣の欄に
今の姓を書いて、
名札をもらう。
「名札には、今の名前を横に
書くってのでいいのー?これ」
そしてユカは旧姓が付いた
名札の空欄に、今の姓を
油性マジックで記入出来ると、
自然と
胸元に名札を着けた。
『会費前払いだから。』
わたしは
受付係の胸元をチラ見する。
2人とも、2つの名前が
並んでいた。
仕方なく
どちらの欄も空欄にした。
チェックをして、
名札を腰元に
付ける。
『名札つけたら、上あがってー。
席は決まってないでーす。』
受付係は
会費を受け取りながらも、
わたしの言いたげな顔に
気も留めず、片手で
上への階段を示してくる。
「サユ、どうする?あまり早いと
ほら、席とか、ヤバくない?」
わたしが
戸惑って見えるのか、
ユカは小声で聞いてきた。
「でも、上がらないと変に思われ
るんじゃない。上にもお店ある
なら、ちょっと時間潰そう。」
わたしは1度ユカの顔を
見つめると、
今度は少し考えて
居酒屋以外も見えている、
2階の店舗を指指す。
隣の1番端っこに
喫茶店の看板が上がっていた。
「よし!それ、いい。じゃ、
始まるまで、あそこに居よ!」
ユカと2人で階段を上がった。
受付には、自分達の後ろには
まだ人がいないが、
会場になる居酒屋からは、
笑い声が漏れ聞こえる。
『カランカラン♫』
すでに賑やかさを仄めかす
居酒屋の前を通り過ぎて、
奥の喫茶店のドアを開けた。
「ここも、はじめて。」
店内は
落ち着いたアンティーク調の
内装になっていて、
窓にはステンドグラスなシートが
施してある、
「だって、この建物自体、
あたしが短大行ってる
頃に出来たもん。」
「じゃ、はじめてなわけだね。」
シールのせいで、
外を隠れて伺う事が
出来そうだった。
これなら、
ヴィゴが来たらすぐに分かる。
さっきの受付で、
リストがチェックされて
いないのは確認済み。
「って言っても、そんなに
こないけど。喫茶店なんか
何年も来てないし。」
ユカは、
ドサリと木製の椅子に座ると、
メニューを手にする。
「子供いると、なかなかだよね。」
メニューを眺めてユカに笑う。
「ファミレスとか、フードコート
ね。今日は子供もいないし、
アイスにしようかなー。
ソーダーフロートで。」
そして、
学生時代と同じメニューを
見つけると
わたしにメニューを回した。
かと思えば、
出し抜けに
「ね、サユ、ナガレも来るよ。」
アイスチャイを頼む
わたしに向かって、ここで初めて
ユカが
ナガレの名前を出してきた。
ユカに会って
今までで、
初めて聞かれた。
「サユはさ、ナガレとは、、
部屋、どうする?気にする?」
出されたオシボリで、
手を拭いながらユカが、
探るように伺ってくる。
気が効かないようで、
サユは察するところは察していた
のだろうか。
実は、
さっきのリストで確認して、
少し躊躇ったのだ。
そこには早々に
瀬速ナガレ→✔ されていた。