忘れたまんまの君がポケットに入れていたのは青い日の恋かもしれないと先生は云った
「内田くん、中学の塾が一緒で
わたし、知ってるんだよ。」

マコ様に
言い訳するみたいだけれど、
一応
レオが知り合いだと、
わたしはマコ様に説明してみる。

「知ってる。レオから聞いてる。」

なのに意外にも、
マコ様が知っている?
もう何年も前の話で、たいした
ことでもないはずなのに。
夫婦って、、、

「そう。なら、いいんだけれど。
マコ様と内田くんが、、なんだか
びっくりしたかも。あ、深い意味
はなくて、その馴れ初めとか?」

別に聞いても聞かなくても
いいことなんだけれど、
つい
気になってしまったことが
口を突いて出た。

確か、中学の感じでは
虎治ダイゴとかなり
仲が良かった記憶がある。
それこそカレカノ。

「何?ダイゴのこと?ダイゴとは
ちゃんと中学卒業で別れたし、
レオは高校が一緒だっただけ。」

思っていたことが
またまた顔に出ていたらしい。
余計な詮索だったと
わたしは反省をして、
マコ様には、
社交辞令かもしれないけれど、

「そっか高校ね。あ、会えない
と思うから、旦那さまには、
よろしくお伝えください。」

月並みなことを伝えて、
立ち去ろとしたのに、、

「何それ。ねぇ、ヴィゴのやつ、
本当に好きだった?あれから
結局どうなったんだよ?」

マコ様の言葉は、
意外な方向から
それこそ夜風に乗って、
煙草の煙と一緒に

ユカ達の元に戻ろうとする
わたしの足を止める。

けれども

マコ様が問いかける
内容には、
もうあの夏に答えが出ているから
簡単に
わたしは返事が出来る。

「マコ様に聞かれるとか、その
方が疑問だけれど。ヴィゴは
初恋で、あの日に欠片も気持ち
なくなりました。これで良い?」

全くもって一体どうして
こんな流れになってしまったのか。
突き放す様に、
わたしはマコ様へ
初恋の最終アンサーを放った。


「ふうん。旦那に言っておく。」

「あの、どうして内田くん?」

あの集会を覚えているなら、
マコ様でも興味を持ったのかも
しれないけれど、
どうしてレオが関係するのだろう。

「ヴィゴの件で、つまらないこと
言ってくる奴は絞めてあげる。」

狐につままれた気分で、
どうしても
わたしには話が見えない。

だから、わたしも
お返しとばかりに、
マコ様のタブーかもしれない
話をするなんて、
意地悪さが出たのだろうか。

「あの、虎治くんと続くと思って
ました。お似合いだったから。」

マコ様に、
独り言みたいに告げる。

居酒屋の方から、
二次会に向かう何人かが
出てくるのが見えて、
わたし達の様子に
気が付いた。

「そうかも?でも、あたしが
ダイゴ、重くて逃げたんだよ。
嫌いじゃないのにさ。変だよね」

マコ様は
手にしていた煙草を
携帯ケースに消し入れた。

夜の体育館は、
お盆にもかかわらず まだ
灯りが点って明るい。

駐車場の常夜灯に照らされて、
マコ様の言葉は続く。
それは、

「高校行けば学校ちがうし、
あたしは内申書だけでいける
私立選んだから、1度ダイゴと
離れた。まあ、まさか、
そこで付き合ったレオと、
子ども出来て籍入れるとかは、
思ってなかったけどね。」

どこか自分の姿と重なる
昔話に聞こえる。

そして、
同じように考える人が
他にもいたことに、

急に、わたしは、救われたと
感じた。


「あの、何でわたしに、、」

自分も覚えがある気持ちなだけに
とてもマコ様の内側で奥にある
感情だったはずだと
わかる。

だから
同窓生程度の わたしに話すのは
あまりにも不思議過ぎた。

「知らないの?旦那の遅い初恋
竹花さんなんだって。だから」

???

思わず目を何度も瞬き。


「あの、旦那さまの初恋の相手
って、モヤモヤしませんか?」

「しないよ。それより、竹花さん
が困ってるって聞いたら、レオが
気にするから。その方がイラつ
くんだよ。だから気にしない。」

極論?な気はする。
でも何故かマコ様の気持ちは、
なんとなくわかるかも?

だからって、
その後の提案には、もっと意外な
気持ちになってしまった。

「せっかくだから、寄せ書き。
隣同士で書けばいい。きっと
変な騒ぎする奴も出ないよ。」

ユカ達が、わたしを探す声が
ここまで聞こえてきた。

「マコ様って、やっぱり男前。」

「そう?」

マコ様のドヤ顔にわたしは、
笑って
マコ様と居酒屋に戻ると、
大漁旗の寄せ書きに、
皆んなで名前と一言を書く。

わたしの名前の横を見て、
ユカが大笑いしたのは
仕方ないと思う。

どうして、女の子って
天の邪鬼な気持ちを生んで
しまうのだろう。
って、マコ様の文字を見て

わたしは 思う。



竹花サユ

真田山マコの舎弟







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