突然ですが、契約結婚しました。
黙々とそれらを平らげた後、膝を突き合わせてのミーティングが始まった。議題はもちろん、私達のこれからのこと。

「もう籍を入れちゃってるわけですし、各方面への報告は早急に済ませるべきですよね」
「そうだな。特に総務と所長には明日にでも報告しよう」
「わかりました。全体にも今週中に周知できるようにします?」
「あぁ。どうせ報せるなら、まとめた方がいいと思う」

主任に借りたメモにペンを走らせ、ミーティングの議事録を作る。名称は、さしずめ『第1回契約婚夫婦会議』とでも言ったところ?
2回目以降が開催されるかはわかんないけど。

「結婚までの経緯、どうします? 絶対聞かれると思うんですけど」
「無難に、これまで隠れて付き合ってたってことにすればいいんじゃないか? びっくりさせはするだろうけど、あけすけに話すよりマシだろ」
「確かに。酔ったノリで入籍しましたなんて、みんなひっくり返りそうですもんね」

以前から交際していた設定、っと。
おっと、了承しちゃったけど、この説明じゃ納得しなさそうな女が若干1名いるぞ。まぁいいけど……発表後、呼び出し食らうな、絶対。

「今が6月頭だろ。来週末、予定あるか?」
「今のところ、何もなかったと思いますけど。何かすることあります?」
「物件を見に行こう。今すぐにとは言わないが、新婚なのにいつまでも届け出の住所が違うと怪しまれるだろ」
「あぁ……なるほど。かしこまりました」

そうか、引っ越しもしなきゃなんないのか。
昨晩はそこまで考えてなかったけど、主任と結婚するってことは、一緒に暮らすってことなんだ。
今の時代、別居婚というスタイルもあるけど……同じ職場で働いている私達には、あまり向かないように思う。
変な噂が流れかねないリスクを冒すより、ルームシェア感覚で一緒に暮らした方がいい……ってのは、口にはしないけど共通認識のはずだ。

「家賃は折半にして、お互い一定額を出し合って家計費にしましょう。そこから、日用品とか光熱費を出すのはいかがですか」
「賛成。食費も家計費から出そう。家事は折半で、飯は先に帰宅した方が作るのはどうだ」
「わかりました。洗濯は各自でお願いします」
「そうだな、わかった」

他人事みたいだけど、すごいな、私達。いつもみたいな調子で、サクサク会議が進んでく。

「あとは……家族への挨拶か。小澤、出身どこだっけ」

一通りのことを決め終えた後、少しの間を置いて主任が重い口を開いた。
最も悩ましい問題のはずだから、きっとこれが最後の議題だろう。

「うちはいいです。それより、主任のご実家は、関西ですよね? 早めに挨拶に行かないとですね」
「え……おい、ちょっと待て。話を勝手に進めるな」
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