突然ですが、契約結婚しました。
「そんなにかしこまらんとって! 私もお父さんも、今日をすごい楽しみにしとったんよ」
顔を上げると、ひまわりみたいな笑顔が私を迎え入れてくれていた。主任は絶対に見せないような表情だけど、やっぱりどこか主任と重なる。
「謝らなあかんのはこっちやしね。ごめんねぇ、うちの息子が計画性のないあんぽんたんで、急遽来てもらうことになってもーて」
「あ、あんぽんたん……?」
「……聞き返さんでいい」
居心地の悪そうに顔を顰めた主任が、お義母さんを軽く押し退けて家の中に入る。全く意に介さないお義母さんが手招きをしてくれたので、私も慌ててその後に続いた。
「そういう訳で、入籍した」
ダイニングテーブルに腰を下ろして顔を合わせるなり、主任が淡々と入籍報告。って、いやいやいや。
「そういう訳でって、どういう訳なんかさっぱりわからんわ」
頭を抱えたお義父さんとお義母さん。
白髪混じりでフレームの細い眼鏡をかけたお義父さんは、眉間に深い皺を刻んで息を吐いた。主任、お義父さんにもそっくりですね……。
「改めまして、小澤環と申します。真緒さんとは会社の上司部下の関係で、少し前からお付き合いさせていただいておりました。
本来であれば入籍前にご挨拶させていただかなくてはならないのに、順が逆になってしまって本当に申し訳ございません」
「もう、環ちゃんは謝らんでええんよ! そういうのは何にも報せてなかった真緒がぜーんぶ悪いんやから!」
「そうやで。穂乃果ちゃんの結婚式だってつい最近あったんやし、言うタイミングはいくらでもあったやろうに」
おっと? お初におミミにかかります、ホノカちゃん。
結婚式……ってことは、あれか。それ、主任のオモイビトの名前だったりする?
「悪かったって。俺だって、あの時はそんな急ぐつもりなかったから言わんかってん。電話でも言うたやろ。
結婚式の後に環と会って、改めて結婚に現実味が湧いたからその場でプロポーズした。俺のわがままで入籍急いだから、報告が遅なった」
打ち合わせした内容とはいえ……俳優顔負けの演技だこと。こういう嘘、苦手そうに見せて上手くやるんだから。
「あんたはもう……昔から肝心なことは最後まで言わんのんやから」
「ごめんな、環さん。こいつ、口下手やから苦労することもあると思うけど」
「あ……いえ」
口下手どころか仕事ではツノの生えた鬼で悪魔なので、私生活がどうであろうと支障ありません。
とは言えないので、頭の中で即座に変換する。
「部下として働いている時から、人や仕事に対する姿勢を尊敬してましたし、パートナーとしても、率先して色んなことを考えてくれます。必要以上に言葉にしなくても、それが伝わるから私は嬉しいです」
顔を上げると、ひまわりみたいな笑顔が私を迎え入れてくれていた。主任は絶対に見せないような表情だけど、やっぱりどこか主任と重なる。
「謝らなあかんのはこっちやしね。ごめんねぇ、うちの息子が計画性のないあんぽんたんで、急遽来てもらうことになってもーて」
「あ、あんぽんたん……?」
「……聞き返さんでいい」
居心地の悪そうに顔を顰めた主任が、お義母さんを軽く押し退けて家の中に入る。全く意に介さないお義母さんが手招きをしてくれたので、私も慌ててその後に続いた。
「そういう訳で、入籍した」
ダイニングテーブルに腰を下ろして顔を合わせるなり、主任が淡々と入籍報告。って、いやいやいや。
「そういう訳でって、どういう訳なんかさっぱりわからんわ」
頭を抱えたお義父さんとお義母さん。
白髪混じりでフレームの細い眼鏡をかけたお義父さんは、眉間に深い皺を刻んで息を吐いた。主任、お義父さんにもそっくりですね……。
「改めまして、小澤環と申します。真緒さんとは会社の上司部下の関係で、少し前からお付き合いさせていただいておりました。
本来であれば入籍前にご挨拶させていただかなくてはならないのに、順が逆になってしまって本当に申し訳ございません」
「もう、環ちゃんは謝らんでええんよ! そういうのは何にも報せてなかった真緒がぜーんぶ悪いんやから!」
「そうやで。穂乃果ちゃんの結婚式だってつい最近あったんやし、言うタイミングはいくらでもあったやろうに」
おっと? お初におミミにかかります、ホノカちゃん。
結婚式……ってことは、あれか。それ、主任のオモイビトの名前だったりする?
「悪かったって。俺だって、あの時はそんな急ぐつもりなかったから言わんかってん。電話でも言うたやろ。
結婚式の後に環と会って、改めて結婚に現実味が湧いたからその場でプロポーズした。俺のわがままで入籍急いだから、報告が遅なった」
打ち合わせした内容とはいえ……俳優顔負けの演技だこと。こういう嘘、苦手そうに見せて上手くやるんだから。
「あんたはもう……昔から肝心なことは最後まで言わんのんやから」
「ごめんな、環さん。こいつ、口下手やから苦労することもあると思うけど」
「あ……いえ」
口下手どころか仕事ではツノの生えた鬼で悪魔なので、私生活がどうであろうと支障ありません。
とは言えないので、頭の中で即座に変換する。
「部下として働いている時から、人や仕事に対する姿勢を尊敬してましたし、パートナーとしても、率先して色んなことを考えてくれます。必要以上に言葉にしなくても、それが伝わるから私は嬉しいです」