突然ですが、契約結婚しました。
呆れたように息を吐いた主任だけど、その横顔は柔らかく、緊張感はなかった。見上げている間に少し置いて行かれて、小走りで追いかける。
鳥居をくぐると、そこは外界から切り離されたような荘厳な空間だった。立ち並ぶ木々の隙間から日が差し込んで、神様の通る道を神々しく照らしている。
境内の空気は澄んでいて、私達のいつもの軽口を知らず知らずのうちに封じ込めた。
「すげ……」
思わず口を衝いて、というようなトーンで主任がそうこぼしたのは、御本殿を左に抜けた先の、神楽殿に行き着いた時だ。
正面に悠然と構えた大注連縄を見上げて、私達はしばし押し黙る。
さすが、全国の神様が集まる場所なだけあるなぁ。敷地の広さも社殿の大きさや規模も、桁違いに大きい。
せっかくだからと寄っただけだったけど、来てよかったかも……。
「2礼4拍手1礼だったよな」
「でしたね。行きましょうか」
本殿に続き、神楽殿にも手を合わせた。
大国主神に願いたい縁もないからと、本殿では仕事での縁を願っておいた。
神楽殿でも同じ願いを……。
「…………」
「…………」
1礼の後、ちらりと横を見やると主任はまだ目を閉じ手を合わせていた。その彫刻のような端正な横顔に思う。──主任は、一体何を願ったんだろう?
川の両脇に宿が並ぶ玉造温泉に着いたのは、陽も傾きかけた頃。チェックインして通されたのは、なんと露天風呂付きの客室だった。
「わ……広っ……!」
荷物を投げ出して、思わず部屋を探検してしまう。10畳は優に超えるだろうという和室に、ベッドが2つ並んだ寝室。更には茶室まであり、外には手入れの行き届いた庭園が広がっている。……おっと、露天風呂まであるじゃないですか。
「善さん、めっちゃええ部屋とってたんやなぁ……」
「代金はいらないって言われましたけど……さすがにここまでのお部屋は想像してなかったというか」
「俺もだ。とはいえ、代金は絶対受け取ってくれないだろうから……」
「お土産、どっさり買って帰りましょう」
「だな。持って帰れない分は郵送で送ろう」
いつまでも恐れ慄いていても仕方がない。今は宿を堪能するとしよう!
夕飯まではまだ時間があるので、私達はそれぞれに大浴場に向かうことにした。
善さんが予約してくれたお宿は、お風呂もお料理も最高だった。
「苦しい……。もう入らないです……」
「さすが、豪華な懐石だったな。俺も限界だ」
鳥居をくぐると、そこは外界から切り離されたような荘厳な空間だった。立ち並ぶ木々の隙間から日が差し込んで、神様の通る道を神々しく照らしている。
境内の空気は澄んでいて、私達のいつもの軽口を知らず知らずのうちに封じ込めた。
「すげ……」
思わず口を衝いて、というようなトーンで主任がそうこぼしたのは、御本殿を左に抜けた先の、神楽殿に行き着いた時だ。
正面に悠然と構えた大注連縄を見上げて、私達はしばし押し黙る。
さすが、全国の神様が集まる場所なだけあるなぁ。敷地の広さも社殿の大きさや規模も、桁違いに大きい。
せっかくだからと寄っただけだったけど、来てよかったかも……。
「2礼4拍手1礼だったよな」
「でしたね。行きましょうか」
本殿に続き、神楽殿にも手を合わせた。
大国主神に願いたい縁もないからと、本殿では仕事での縁を願っておいた。
神楽殿でも同じ願いを……。
「…………」
「…………」
1礼の後、ちらりと横を見やると主任はまだ目を閉じ手を合わせていた。その彫刻のような端正な横顔に思う。──主任は、一体何を願ったんだろう?
川の両脇に宿が並ぶ玉造温泉に着いたのは、陽も傾きかけた頃。チェックインして通されたのは、なんと露天風呂付きの客室だった。
「わ……広っ……!」
荷物を投げ出して、思わず部屋を探検してしまう。10畳は優に超えるだろうという和室に、ベッドが2つ並んだ寝室。更には茶室まであり、外には手入れの行き届いた庭園が広がっている。……おっと、露天風呂まであるじゃないですか。
「善さん、めっちゃええ部屋とってたんやなぁ……」
「代金はいらないって言われましたけど……さすがにここまでのお部屋は想像してなかったというか」
「俺もだ。とはいえ、代金は絶対受け取ってくれないだろうから……」
「お土産、どっさり買って帰りましょう」
「だな。持って帰れない分は郵送で送ろう」
いつまでも恐れ慄いていても仕方がない。今は宿を堪能するとしよう!
夕飯まではまだ時間があるので、私達はそれぞれに大浴場に向かうことにした。
善さんが予約してくれたお宿は、お風呂もお料理も最高だった。
「苦しい……。もう入らないです……」
「さすが、豪華な懐石だったな。俺も限界だ」