どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~


「これが運命なんだなって思うよ。どこかで何かが違ってたら、とかよく言うけど、それって結局運命の相手じゃないってことなんだよ。あたしは、病気のことがなくても、正直社長夫人なんて柄じゃないし、ややこしいことは好きじゃない」

「そうかもしれないけど、それも吉岡なりの思いやりだろ。ありがとう」

「そんなに優しくないよ」

と誤魔化したけど、嬉しかった。


病気がなかったら、社長と付き合ってた。
それは誰にも言わないけど、心の中にある真実。


「優しいよ。俺はそういう吉岡だから好きになった。万由もあれだけ吉岡のこと好きなのは、吉岡の優しさをちゃんとわかってるからだよ」


面と向かって、好きと言われて、ものすごく心が軽くなった。

ちゃんとあたしを好きになってくれて、あたしも好きで。
でも、付き合うことはなかったあたし達。

でも、あたし達が惹かれ合ったことで、そこから小久保との出会いに結びついて……


「俺は、自分に何が足りなかったんだろうって悩んだ。守ってやるっていうそういうところがなかったし、将来苦労するんだろうなって吉岡に思わせたんだろうなってのも思った。だから、万由を好きになったとき、思ったんだ。同じ間違いはしたくないって」

「ま、結論から言えば、社長は別にそこそこちゃんとイイ男だったよ。あたしに勇気がなかっただけ」

「いや、一歩踏み出せなかったのは、俺に自信がなかったから。吉岡を守る自信は正直、なかった。付き合おうと言ったものの、先のことなんて考えてなかったから」





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