どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~

連絡があったのは、次の日の夜。


【昨日はごめん。今日も仕事が入って、行けなくなった。今度ゆっくり話す】

とメッセージが届く。


【いいよ。仕事頑張って】

とそれだけを返した。


不意に、中学の時付き合っていたサッカー部の子のことを思い出す。

高校推薦で有名な高校へ行くために、必死で練習していた彼にわがままは言えなかった。

遅くまで練習して疲れている彼に、バレンタインだから、クリスマスだから、と会いたいとは言えなかった。

結局、遠慮してばかりだった恋は半年で終わったっけ。

あの時の気持ちと似ている。

負担になりたくない。
重荷になるくらいなら私が我慢しよう。

そう思って、だんだん自分が追い詰められる。


これではだめだと思い直して、吉岡先輩に助けを求めた。



「月曜から飲んじゃう?」

「お願いします。佐竹さんも一緒でいいですか」

「佐竹、役に立たないけどいいの?」

「男の意見もなかなかいいと思いますよ。ぜひ、俺におごらせてよ」

「よっし、おごるなら来て良し!!」

佐竹さんは、吉岡先輩に肩を叩かれて、嬉しそうな顔をした。

「おごるから気にせずいっぱい食べて、飲んで、吐き出しちゃって」

佐竹さんの優しさも染みる。

ひとりにはなりたくない夜だった。



圭史さん……
今日は、出張だったみたいで社内で顔を見ることもなかった。


会いたいけど、会うのが怖い。




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