どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「社長、今のは嘘じゃないですか。さっき言ったことが本当で、実は悩んでるんじゃないですか」
「あはははは。俺の演技に騙された?レールの上を歩くのって楽すぎて、やめらんねぇよ」
強がるように笑った社長は、私に背中を向けた。
大きく見えるその背中でどれだけ大きなものを背負っているんだろう。
いつも厳しい表情で、背筋を伸ばして社内を歩く姿を見つめていた。
疲れるだろうな、大変なんじゃないかな、って何度思っただろう。
社長は弱音を吐いたり、辛いときに泣いたり、できるのかな。
「嘘…… 私には、とても寂しそうに見えました。社長の背中が」
「……ダメだよ。俺に近づくと。俺のこと知らない方がいい」
「誰かに吐き出さないと、社長がつぶれちゃいますよ」
私、人を見る目だけは確かだと思う。
悪ぶっても、冷たいふりをしても、にじみ出る優しさ。
この人、絶対に優しい。
「俺に惚れたか?」
「そんな、無謀なこと……っ」
と言い終える前に、私の唇が奪われた。
一瞬の出来事だった。
柔らかくて、温かい唇。
「俺ってこういう軽い男だから」
まだ寂しそうな顔でそんなことを言う社長の胸に顔をうずめてしまった。
4年目のドジなOLが社長にこんなことをして、許されることじゃない。
でも、止められなかった。