どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~

「私達にも遠慮はいらないから。あたしだって、小久保が好きだから一緒にいんの。どちらを選ぶかって言われたら佐竹より小久保選ぶからね、あたし」


あごを少しあげてそう言った吉岡先輩に佐竹さんは、しょんぼりした顔をした。


「すいません、佐竹さん」

「俺は、そういう吉岡さんが好きだから全然いいんだよ。人に、元気をいっぱいあげられる人だから、俺が独り占めしてちゃもったいない」


本当にそうだ。
吉岡先輩は、困っている人や悩んでいる人を放っておけない人で。
そういう人を元気にさせるパワーがある。


「そうなんだ~。じゃあ、他に何人か男作っても平気?」

と調子に乗る吉岡先輩に、

「それだけは無理っす」

と言った。



二人みたいになれたらいいな。

言いたいことを言えて、わがままも言えて。

「理想のふたりだな」

と呟く私に、吉岡先輩は教えてくれた。


「そう思うなら、ケンカしな。社長と。あんた達、ケンカとかしてないでしょ?」

「はい」

「それって、小久保が我慢してるからなんだよ。言いたいこと一回言ってみなよ」


ケンカはしたくなかった。
避けていた。

今までの付き合いを思い出してもそう。


中学のあの時も、『クリスマスくらいサッカーじゃなく私を選んで』と言えていたら何かが変わったかな。

気付いてくれない彼にイライラしていたけど、平気なフリをしていたのは私。

サッカー頑張ってね!と笑顔で手を振る私を見て、ムリしてんのかな?って思える男の子なんてそうそういない。


「社長は、言ってたよ。何があっても、守るって。アイツを守れなければ俺は男として終わりだー、みたいなこと言ってた。それって、最後の恋だって決めてるってことだと思うよ」
 

「ほんとですか…… そんなことを……」

「自信もちなさい」

「なんだか照れちゃいますけど、すごく嬉しいです」



その言葉を、今日の日記に書いて寝よう。

素敵な素敵な食事会だった。

話して良かった。
圭史さんとのこと。

私にとって、ひとりで抱えるにはつらすぎる恋だ。









< 110 / 189 >

この作品をシェア

pagetop