どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「私達にも遠慮はいらないから。あたしだって、小久保が好きだから一緒にいんの。どちらを選ぶかって言われたら佐竹より小久保選ぶからね、あたし」
あごを少しあげてそう言った吉岡先輩に佐竹さんは、しょんぼりした顔をした。
「すいません、佐竹さん」
「俺は、そういう吉岡さんが好きだから全然いいんだよ。人に、元気をいっぱいあげられる人だから、俺が独り占めしてちゃもったいない」
本当にそうだ。
吉岡先輩は、困っている人や悩んでいる人を放っておけない人で。
そういう人を元気にさせるパワーがある。
「そうなんだ~。じゃあ、他に何人か男作っても平気?」
と調子に乗る吉岡先輩に、
「それだけは無理っす」
と言った。
二人みたいになれたらいいな。
言いたいことを言えて、わがままも言えて。
「理想のふたりだな」
と呟く私に、吉岡先輩は教えてくれた。
「そう思うなら、ケンカしな。社長と。あんた達、ケンカとかしてないでしょ?」
「はい」
「それって、小久保が我慢してるからなんだよ。言いたいこと一回言ってみなよ」
ケンカはしたくなかった。
避けていた。
今までの付き合いを思い出してもそう。
中学のあの時も、『クリスマスくらいサッカーじゃなく私を選んで』と言えていたら何かが変わったかな。
気付いてくれない彼にイライラしていたけど、平気なフリをしていたのは私。
サッカー頑張ってね!と笑顔で手を振る私を見て、ムリしてんのかな?って思える男の子なんてそうそういない。
「社長は、言ってたよ。何があっても、守るって。アイツを守れなければ俺は男として終わりだー、みたいなこと言ってた。それって、最後の恋だって決めてるってことだと思うよ」
「ほんとですか…… そんなことを……」
「自信もちなさい」
「なんだか照れちゃいますけど、すごく嬉しいです」
その言葉を、今日の日記に書いて寝よう。
素敵な素敵な食事会だった。
話して良かった。
圭史さんとのこと。
私にとって、ひとりで抱えるにはつらすぎる恋だ。