どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~

その日の夜、電話があり、会おうと言われた。


「疲れてるでしょ。今度でいいよ」

「ダメだ。今日じゃないと」


結局、会いたい気持ちは抑えられなかった。

家の前まで車で来てくれた圭史さん。
車に乗り、久しぶりだなと感じた。


「元気?」

「うん、圭史さんこそ、大丈夫?仕事大変なんじゃないの?」

「大丈夫だよ。会社にいない日が多くて、今週も出てばかりだ」

「…………」


泣いてしまいそうで圭史さんの顔が見れない。
いろんな感情がぐちゃぐちゃになっている。

会いたかった。
声が聞きたかった。

大好き。
心配。

寂しいよ。
ほんとはずっとずっと泣いちゃうくらいつらかったよ。



「まずは、土曜のこと謝らせてくれ」

「忘れて寝てたからいいよ」

「嘘つけ。お前のことだから、朝まで眠れなかったんじゃないか」

「そんなことないもん。別に、圭史さんのことばっかり考えてるわけじゃないし、会えなくても平気だし、別に……」


ダメだ。
もう我慢できない。

涙が溢れる。


「万由……ごめん。ごめんな、俺、無理させてるな。ごめん」


別れようって言われるんじゃないかと思った。

そんな空気を感じて、私はまた平気なフリをする。


「大丈夫だって!社長と付き合うには覚悟も必要だもん。これくらいのことで、泣かないよ、私」

「バカ、もう泣いてんじゃん」


そう言って、抱きしめてくれた大きな胸は懐かしい匂いがした。

まだ数日しか経っていないのに、遠くにいってしまったような気がしていた。


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