どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
Love23 心のうち
Love.23 心のうち


絞り出すように圭史さんが口を開く。


「俺は、怒って欲しかった。もっと本音でぶつかって欲しかった。いつも大丈夫だよって笑ってくれるお前が大好きだけど、物分かりが良すぎて、心配だった。朝まで連絡できなかった時、万由は怒らなかった。俺は、怒鳴って、殴って欲しいくらいだったんだよ」


おでこにそっとキスをした。

知らなかった、そんなこと。


車の中はクーラーで冷えているのに、圭史さんの唇はとても温かい。


「パーティーなんか行かないで!って言ってもいいんだぞ?他の女性と仲良くしないでって言ってもいいんだ。俺が社長という立場だから、お前は我慢してる。でも、俺はお前の前では社長じゃない。もっと、本当の万由を見せてくれよ」


「圭史さん、私……一緒にいると安心して、愛されてるなって思う。でも、離れているといろんなこと考えちゃう。釣り合わないんじゃないか、私に気を使って圭史さんが仕事以外にも疲れちゃってるんじゃないか、とか……私を不安にさせないように頑張ってくれてること知ってるから、だから、言えなくて」


そっとそっと触れた唇。
少し震えた唇。


「万由、仕事で無理するのは疲れるけど、お前のことで頑張るのは疲れない。俺が好きでやってることだから。今日だって、俺が会いたくて会いに来た。疲れるわけないだろ?会えなくて早く寝たとしても、明日の朝元気だと思う?お前に会って、こうして触れて、ちゃんと話せたら、寝不足でも明日元気でいられる。それがオアシスなんじゃない?」


確かめ合うようにそっと何度も触れる唇。

伝わるね、愛。



「俺、不安だった……」


最初に圭史さんと話したあの夜を思い出した。


「社長っていう立場で人は俺を見てて、うらやましいと思われるだろうけど、それは俺にとってマイナスなことでもあって。社長であるってことを隠したいって思うこともある。こうして、彼女に変な遠慮させちゃうのも俺が社長だからなのかなって。不安だった。もうこんなつらいのはイヤだって万由が逃げちゃうのが怖かった」


「不安になるんだ……圭史さんも……」


「当たり前だろ。大事な人がいると、不安になるんだよ」

「ごめんね、私…… 不安なのは私だけだと思って…… 圭史さんも私と同じように不安になったり、モヤモヤしたり……するんだよね」


勝手に、私が自分の価値を下げていたことに気付く。
選んでくれたのに、相手が社長だってこと、素敵過ぎる人だからってことで。
勝手に自信失くして、不安になって。

圭史さんの不安なんて考えてなかった。

< 115 / 189 >

この作品をシェア

pagetop