どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「逃げないよ、私。絶対逃げないから」
圭史さんは社長だけど、社長だからこそ弱音も吐けなくて。
だから、オアシスになりたかった。
それなのに、今の私はオアシスになれていない。
「ほんとに?」
「逃げない。圭史さんを不安にさせたくない」
握った手を撫でる圭史さん。
小さく頷きながら、ゆっくりと心の中を話してくれる。
「不安で……その不安を消すように体を重ねて、その一瞬だけ不安は消えるけど、解決にはならないのに。あの日も……金曜日も、パーティーに行く罪悪感でいっぱいだったんだ。だから、万由を求め過ぎた。体を重ねて、その時は安心するのに、また不安になる」
その感覚は同じだった。
愛されてる時、心から満たされて、もう大丈夫って思う。
でも、またすぐに不安がやってくる。
圭史さんの今日の優しいキスは心が通じ合う。
「俺は、マメじゃないからあんまり連絡もしないけど、いつも万由のこと考えてる」
「うん、私もずっと考えてる」
「さっき、俺のことばかり考えてるわけじゃないって言っただろ?嘘でも、悲しいこと言うな」
スネたような顔をした圭史さんの顔を両手で挟む。
「ごめんね。圭史さんの重荷になりたくないから、物分かりのいい女でいたかったの。でも、もうやめるね。本当は全然大丈夫じゃない。寂しいよ。いつも一緒にいたいし、声が聞きたい」
圭史さんも私の頬に優しく触れる。
「私だけを見てほしい。他の女の人と仲良くしてほしくないし、美人の社長令嬢なんかに絶対負けたくない。誰も圭史さんに触れて欲しくない」
「俺も、万由のこと俺だけのものにしたい。離れてる間に寂しくて誰かに頼ったりすんなよ」
「吉岡先輩と佐竹さんにはいつも助けてもらってる」
「あのふたりはOK。今度、4人で飯でも食いに行こうか」
嬉しい提案に胸が躍る。
佐竹さん、緊張するだろうなぁ。
「その前に来週のキャンプがあるな。週末までに何とか仕事落ち着かせるから」
「……うん」
キャンプイベントの話は社内でも盛り上がっていて、30名ほどが参加申し込みをしていた。
立候補でイベントの担当グループもできて、佐竹さんと新人の新井海君が営業部から手を挙げた。
テントは持ち寄りで、ほぼ経費がかからずに準備ができた。
あとは当日を迎えるだけだった。
「キャンプのことも提案してくれてありがとう。親父の説得は時間かかったし、今でも嫌味を言われるけど、仕事もそっちも成功させたい」
「そうだね!会社って雰囲気大事だから。社員が仲良く、風通しが良いと会社の業績も伸びると思うんだ」
「お、どした?今、すげーいいこと言ったな。社長夫人っぽかったぞ」
そんな冗談にも涙が溢れちゃう。
嬉しい。
私、なれるかな。奥さんに。
いつまででも待つから、この立派な社長を支える妻になりたい。
「キャンプ、同じテントで寝たいけど、無理だよな」
「絶対無理だよ」
「またふたりで行けたらいいな。その時は、山の中にお前の喘ぎ声響かせてやるから」
「もうっ!」
笑いながら、チュッっとキスをした。
ここ最近は、会えば不安で体を重ねていたけれど、今日はキスだけで満たされる。