どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「なあ、ちょっと気になったんだけど、社長令嬢が美人で英語話せるってどこからの情報?」
急に真面目な顔になる圭史さん。
ここは、同僚でもある秘書課の皆さんを守らねば。
「それは守秘義務で」
「なんだよ、それ~。ま、出どころはだいたいわかる。あのおしゃべり軍団だろうけど」
私は、目をそらしたけど、圭史さんにはお見通しみたい。
「圭史さんと秘書課のみんなっていい関係だね」
「どうしてそう思うんだ?」
「愛に溢れてるよ。みんな社長のこと心配してるし、大事にしてる。だから、圭史さんも大事にしてあげてね。時々ランチも連れて行ってあげてね」
「お、おう。それは本音?」
「うん。強がりじゃない。ワンランクアップした彼女の余裕かな?」
私は髪を撫でられ、ニコニコ微笑んだ。
少しだけ、大人になれたかな私。
「あとね、お願いがあるの。書類渡したときに、無言でアイコンタクトしてほしいの」
「なんだそれ??」
「今、やってみて。はい、社長これ書類です」
私がエア書類渡しをすると、圭史さんはちょっと困った表情をした後に、受け取る仕草をしてくれた。
「それそれ!!」
口元をぐっと結び、少し笑い、目を合わせる。
秘書さん達がキュンとするのもわかる。
「あとね、あとね、今度コーヒーいれたいの。圭史さんの為に。だから、それ飲んでね」
「お、おう。良いけど、おしゃべり軍団から一体何を聞いたんだか」
「ふふふふ。内緒」
会社にいる圭史さんにコーヒーを出すのも夢だけど、家で朝食にコーヒーを……っていう夢も、ね。
いつか叶うといいな。
「体で愛を確かめ合うのも大事だけど、それ以上に大事なことがいっぱいある。だから、今日だけは我慢して帰る。帰って、お前のこと考えながら眠る」
「うん。私もそうする。会いに来てくれてありがとう。会えて良かった」
「俺もちゃんと本音を言えて良かった」
「私も……もっとわがままになるね」
「今日は特別な日になったな」
車から降りて、窓から顔を出す圭史さんにキスをした。
エッチじゃない圭史さんも最高に大好き。
「じゃ、とりあえず、美味しいブラックコーヒーいれる練習しといて」
「はい、かしこまりました」
「じゃあ、また」
「うん、また明日」
手を振って、車を見送った。
ふと顔を上げると、2階の窓からお母さんがこちらを見ていた。
「……お母さん?」
私の視線に気づくと、さっとカーテンを閉めた。