どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「俺、このままだと好きになりそうです……」
「…………」
先輩として好きなんだと安心した後、数秒で、その考えが違うんだと分かった。
風が頬をすり抜けていく。
どう答えていいのか全然わからなくて、ただただ馬を見つめていた。
こんなとき、どうしたらいいのかな?
「そんなに困った顔しないでくださいよ。誰かいるんですよね」
「ごめん。あの、ちょっとびっくりして、何も言えなくて」
「ですよね。俺、バレない自信あったんで」
「ごめん、新井君。私、新井君のことはすごく好きだけどそれは一緒に働く仲間としてで、あの、その……そういう風に見れないっていうか」
新井君は、ふふふと笑って、優しく私の肩を叩いた。
「すみません、俺こそ。そこまで困らせちゃったら申し訳ないです。大事な人いるんですよね。今なら、まだあきらめられるから。早く伝えて良かった。小久保さん最近も、なんか元気ない日があって、ずっと俺心配で、なんか仕事に全然集中できなかった」
照れくさそうにそう言った後、その場にしゃがみこんだ新井君。
「……俺、好きになった人には振り向いてもらえない運命なんです。ずっとそう。社会人になってからも告白されたりしたけど、俺が求めてる人には振り向いてもらえない」
「ごめん……ね」
「いや、いいんです。これから頑張って振り向かせたいなって思うけど、いるんですよね。本気で好きな人が」
私はコクンと頷いて、大好きな人の笑顔を思い出していた。
立ち上がった新井君がそっと私の腕に触れ、
「幸せになってください。俺は、やっぱりまだ仕事だけ頑張ります。まだまだ未熟だし、これからも助けてください」
と言った。
真っすぐな目に吸い込まれそうだった。