どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「結婚させたいんだよね」
「だろうな。ネットビジネス界ではこれから伸びる会社だから、関係を強くしたいんだ。俺は、結婚とかそういうことで関係を築くよりもっと別の方法で信頼関係を築きたいと思ってる」
ビールを一気に飲んだ圭史さんはもう一杯とグラスを出した。
「圭史さんが圭史さんらしくいられるのは、私の前だけだって言ってくれたからもう謝ったりしない。前の私なら、私のせいでごめんなさいって思ったんだよね。今はそんなマイナスなこと言わない」
「強くなったよ、万由は。だから、俺も強くなる。なんとしても親父を説得して、ちゃんと認められる形で…… と思ってる」
圭史さんは、結婚というワードは出さないけど、考えてくれているんだなとわかる発言をしてくれる。
もういい歳だし、社内でも社長の結婚はいつだ、って興味津々。
「万由を、会わせたいと思ってる」
「……圭史さん」
「会えばわかってくれると俺は思ってる。甘いかな」
「会わせたいって言ってくれることすごく嬉しい。でも……相談役に前少しだけ挨拶をした時はすごく冷たい反応だったから……ちょっと不安だな」
「親父にとって大事なのは、会社にプラスになる結婚で、俺や万由のことなんて見えていない」
一度だけ、圭史さんが弱音を吐いたことがあった。
相当お酒を飲んでいたこともあるけど、泣いているような声で電話をしてきた。
その時に、もう社長やめようかなって言ったんだよね。
こんな縛られた人生は嫌だ、ふたりで逃げようかって。
嬉しかったけど、それじゃふたりにとって何もいいことない。
逃げても、解決しない。