どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
それから、次の日曜日に相談役の家、つまり圭史さんの実家へとご挨拶に行くことになった。
きっと、ドラマみたいな修羅場が待っているんじゃないか、と想像した。
次の日、吉岡先輩にそのことを話すと、すぐに中井さんに連絡を取ってくれた。
でも、一緒に飲みに行くことはできなかった。
理由は、私の立場ではそれはできない、と。
相談役の秘書さんだもん、それは難しいよね。
「相談役から止められてるだろうしね」
「そうですよね」
「でも、内心はあんたの味方なはず!あの子、昔、苦労してるから」
それ以上言わなかったけど、中井さんにも何かつらい過去があったんだろうことはわかった。
それからは、吉岡先輩に一緒に洋服を選んでもらったりして少しでも、好印象に見られるように努力した。
そして、当日がやって来た。
圭史さんはほぼ寝に帰るだけの都内の1Kのマンションに一人暮らしをしているのだが、ご実家はものすごく大きかった。
広い庭に、松の木。
いかにも、って感じの大邸宅。
スーツ姿じゃない相談役と会うのは初めてだった。
通された部屋は広々とした和室で、庭から太陽の光が差し込んでいた。
「緊張すんなよ」
と圭史さんが廊下を歩く私の頭をコツンと叩く。
「いつも会社ではお世話になっております。小久保万由と言います」
絶対足がしびれる覚悟で正座をした。
「圭史の父です。今日は相談役としてではなく父親として、あなたに会います」
相談役のお顔は、顔は彫りが深く、鼻も高い。
もう70を過ぎているのにダンディーでかっこいい。
声も低くて、圭史さんに似ている。