どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~


「一度が現場でスタートからやってみたい気持ちもあった。3か月台湾へ行って、成功して帰ってきます」

「わかった。もうこれ以上、お見合いは持ってこない。ただ、あのお嬢さんのことだけは自分で片付けろ」


圭史さんは、頷いて私を見た。


「万由と付き合ってから、俺は変わることができた。親父の言いなりだった人生から、自分で切り開く人生に変えたいと思った。どうせ誰かと結婚させられるんだろうってずっと思ってて、本気の恋愛なんてするだけ無駄だと思っていたけど、万由と会って……初めて、これじゃダメだと気付かされた」

私は真剣な圭史さんの横顔を見て、また覚悟が決まった。
絶対に、負けない。

「俺は、たまたま親父の息子だから社長になった。でも、これからはそれだけじゃだめだってわかってる。自分で会社をより良くし、社員に愛される会社にしていきたいと思ってる。こんな風に思うようになったのも、万由のおかげなんだ」

私は恥ずかしいやら嬉しいやら。
時々私と目を合わせながら、話してくれた。

「圭史は物足りなかった。私に意見をぶつけることもなかったし、どこかでこういうお前を待っていたのかもしれないな。まだ認めたわけではないが、これだけ反対されても一緒になりたいという思いだけはしっかり伝わった。小久保万由さん、わざわざお呼び立てして申し訳ない。またいつかゆっくり話す機会もあるだろう。今日はありがとう」

「こちらこそ、お時間を作って頂いてありがとうございます」


しびれた足をどうしようかと思っていると、相談役がそれに気づいた。


「しびれたんだろう。現代の子は正座をする機会があまりないから。圭史の妻になるのなら、これから正座の練習をしておくといい。それから、英語も話せた方がいい。字も綺麗な方がいいし、着付けもできた方がいい」

「親父、もうやめてくれよ。そんなに背負わせないでくれ」

「いいよ、圭史さん。私、英語は勉強し始めたんだ。まだまだだけど」

「それは結構。まぁ、台湾では圭史のやり方でやりなさい。それが通用するかどうか見物だ」





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