どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
そして、圭史さんが嬉しい言葉をくれた。
「万由のお母さんにも会えないかな」
それは私もずっと思っていたことだけど、怖くて……
後回しにしていた。
「今日は体調も良さそうだったから、聞いてみようかな……でも……」
「大丈夫、俺がいるよ」
背中を押されて、勇気が出た。
電話すると、お父さんもお兄ちゃんも戻ってきていて、圭史さんはいい機会だからみんなに挨拶がしたいと言ってくれた。
その足で私の家へ行くと、圭史さんはとても立派な挨拶をしてくれた。
「初めまして。神保圭史といいます。今、万由さんと真剣にお付き合いをさせて頂いております。よろしくお願いします」
お父さんがいてくれて良かった。
お父さんがいるとお母さんが元気なんだ。
やっぱり夫婦だな、と思う。
「万由、こんなイケメンどこで捕まえたんだよ」
とお兄ちゃんが茶化す。
お母さんに睨まれたお兄ちゃんが
「兄です。兄らしいことは何もしてこなかったから俺が言うのもあれですが……万由は優しくて我慢強い子なんで、大事にしてやってください」
お兄ちゃんが私をそんな風に思っていたことに驚いた。
「はい。本当に、優しくて我慢強いです。大事にします」
「もう~、恥ずかしいよ」
と私が笑うと、みんなが笑った。
「単身赴任や、出張ばかりで、万由には苦労をかけました。苦労した分、変に早く大人になってしまったので、心配していたんです。こんな立派な恋人がいたとは知りませんでした」
お父さんもそんなことを言ってくれた。
圭史さんは、社長であることは言わず、IT系企業の経営に携わっていると説明した。
「万由、良かったね。お母さんのこと気にせず、家を出ていいよ」
「お母さん……」
こんなことを言われたのも初めてだった。
お母さんは、私が家を出ることに反対だと思っていたから。