どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
今まで何年も、4人がバラバラになっていた。
なんとなく話し合いを避け、問題だらけの家なのに、平和ぶって。
お兄ちゃんの妊娠騒動の時から、我が家は壊れていると思っていた。
「お母さんがもうちょっと元気になるまでは家にいるから」
「いいのよ、もう元気元気」
と強がるお母さんを見て、圭史さんが口を開く。
「お母さん、ハーブティーはお好きですが?うちの母が体調を崩した時期に、よく飲んでいたハーブティーがあるんですけど、気分転換にいいって言ってたので、良かったら……」
「あら、いいわね。ハーブティーなんておしゃれなもの飲んだことないわ」
「今度、万由さんに渡しておきますね。良かったら試してください」
圭史さんの優しさに涙が出るよ。
こんな風に家族が揃って、話をするのも久しぶりだった。
「しばらく出張で忙しくなりますので、お正月あたりにまたご挨拶に来させて頂いても構いませんか」
お父さんが、大きく頷いて
「正月は戻ってくるから、またゆっくり酒でも飲みながらな」
と言ってくれた。
3人とも、言わないけれど、私のことを心配してくれていたんだとわかった。
彼氏を紹介したこともないし、恋愛の話もしなかったから、いつ結婚するんだろう、とか心配だったのかもしれない。
それも想像だけど。
やっぱり口に出さなきゃ気持ちって伝わらない。
お兄ちゃんのあの言葉でそう感じた。
こうして、私と圭史さんは、ようやく大きな一歩を歩みだした。