どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
そして、あの夜。
仕事で行き詰まり、社内をウロウロしていた俺は営業部に顔を出したんだ。
無意識に辿り着いたのか、万由を探していたのか、それはよくわからない。
導かれるように、営業部に入って行ったんだ。
猫が好きな万由は、万由自身も猫のような存在だった。
犬みたいに俺にしっぽを振る人間ばかりだった。
万由は違う。
ただそこにいて、でも、ちゃんと俺を見ていてくれた。
「社長の背中が寂しそうに見えます」
「誰かに吐き出さないとつぶれちゃいますよ」
そんなことを言ってくれたのは万由が初めてだった。
好きだなって思った。
もうあの時に、好きだった。
だから、あんなことしちゃったんだよな。
わざとだった気もする。
好きになられたらダメ。
俺も好きになっちゃダメ。
だから、嫌われることをしよう。
軽い男だと思われればいいってね。
でも、本能っていうか、抱きしめたらもうわかってしまう。
求めている人なんだってこと。
――ピピピピ
スマホが鳴った。
愛しい人からの連絡だ。
仕事が終わったら俺が迎えに行く約束だった。
車を運転しながらいろんなことを考えてしまう。
3か月、俺は仕事だけに集中する。
万由は?
英語や着付けを勉強するって言ってたけど、絶対寂しくなる。
その時に、新井海みたいなヤツが現れるかもしれない。
いや、新井海がまた手を出すかもしれない。
信じてるけど、万由優しいからなぁ。
好きって言われると冷たくできねぇんだよ。
営業部の男、やたらとイケメンだし、心配……。
佐竹と吉岡がいるから、大丈夫かな。