どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
圭史さんが私と結婚するという保証はまだどこにもなくて。
あの社長令嬢もまだ圭史さんを想っているらしいし、彼女と結婚してしまう可能性がゼロではないのかもしれない。
でも、信じる。
私を愛してくれるあの手を、あの瞳を……。
私の前でだけ、自分らしくいられるんだと言ってくれた言葉を。
「小久保さん。俺、本気だから」
「…………」
真っすぐに私を見つめる熱い目に耐え切れず、目をそらしてしまう。
手を握られた。
振り解きながら、言った。
「ごめん。私は新井君のことは恋愛の対象としては見てないし、これからもそれは変わらない。仕事の仲間として信頼しているけど、それは男性としてじゃない。ごめんなさい」
「…………」
寂しそうな目で私を見る新井君にこれ以上言えなかった。
「一回だけデートしてくれません?」
「それは、できない」
「そっか。俺は社長と同じ土俵にも上がれないんだな」
「ごめん。こんな気持ちでデートはできない」
ここまでストレートに告白されたこと、ない。
好きじゃない人に告白されるってこんなにも胸が痛いんだ。
「俺、クビにされるかもしれないですね」
「そんなこと絶対にしない。社長はそんな人じゃない。新井君、ちゃんと社長のこと見て。わかると思うから」
新井君は、私の片思いだと思っているのか、付き合っていると思っているのかよくわからなかった。
「わかってますよ。社長がそんな人じゃないってこと。わかってるからこそ、悔しいんです」
「…………」
大きな口にパイを入れ、流し込むようにコーヒーを飲んで、失礼します、と席を立った。
「…………」
会社で見る新井君とは別人だった。
社長のこと、本当はちゃんとわかってるんだ。
だけど、認めたくない何かがある。
そんな気がした。