どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「お父……さん?」
どういうことだろう。
お父さんって一緒に暮らすものじゃないのか。
どうしてこの人は、いつもどこかからやってくるんだろう。
高いプレゼントなんていらない。
俺は、一緒に遊んで欲しかった。
キャッチボールがしたかった。
サッカーを教えて欲しかった。
友達のお父さんがよくやってくれる、普通のことを望んだ。
結局、月に何度かしか来ないそのおじさんを、お父さんだとは思えないまま成長した。
ただ、そのおじさんのおかげで、俺も母もお金には困らなかったんだと思う。
俺の母は、独身時代に働いていた出版会社の社長と不倫をして、俺を産んだ。
それを知ったのは、俺が中学生になってからだった。
愛人っていうのか、二番目の妻っていうのかわからない。
けれど、俺のこともそこそこかわいがってくれていた。
俺は、何度も母にきいた。
「これでいいのかよ」と。
我慢して、こっそり隠れるようにして生きている母を見て、なんて女って弱いんだろうと思った。
そして、金と名誉と権力を持った男はずるくて汚いと知った。
反骨精神というのか……
俺は金持ちが大嫌いになっていった。
政治家、医者、教師、だいたい憎んだし、社長なんて存在は俺の中で最悪の最悪で。