どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「知らないことだらけだな。まだ俺達」
「はい」
「お前のこともっと知りたい。今から22階、来てくれる?」
22階というのは社長室がある階で、私のような一般社員が降りることなんてない。
22階に行くということがどういうことなのか、もう子供じゃないからわかる。
「行きたいですけど、仕事が……」
「そうだな。ごめん。俺、どうかしてたな」
私から離れた社長は、自分の髪をぐしゃっと乱して、頬を両手で叩くような仕草をした。
「ごめん。仕事の邪魔した」
「いえ、そんなこと……ないです」
しょんぼりしたような社長の表情が気になって、心配になる。
「社長、いつか22階に呼んでください」
「ああ、必ず呼ぶよ」
そう言った後、もう一度ぎゅっと抱きしめてくれた。
離れそうになった社長の腕を掴んでしまう。
「もう少し、いいですか」
私は大好きな社長の胸に顔を埋めた。
大きくて、安心感のある胸の中で、ドキドキだけじゃない安らぎを感じていた。
「俺、社長になってからこんな気持ち初めてなんだ。いつも何かに追われてて、ホッとできることなんてなかった。でも、今は心からホッとしてて、なんだろうな、これ」
ほのかに香る香水の匂いを忘れないように何度も吸い込む。