どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~

「知らないことだらけだな。まだ俺達」

「はい」

「お前のこともっと知りたい。今から22階、来てくれる?」


22階というのは社長室がある階で、私のような一般社員が降りることなんてない。

22階に行くということがどういうことなのか、もう子供じゃないからわかる。


「行きたいですけど、仕事が……」

「そうだな。ごめん。俺、どうかしてたな」


私から離れた社長は、自分の髪をぐしゃっと乱して、頬を両手で叩くような仕草をした。


「ごめん。仕事の邪魔した」

「いえ、そんなこと……ないです」



しょんぼりしたような社長の表情が気になって、心配になる。



「社長、いつか22階に呼んでください」

「ああ、必ず呼ぶよ」


そう言った後、もう一度ぎゅっと抱きしめてくれた。



離れそうになった社長の腕を掴んでしまう。


「もう少し、いいですか」


私は大好きな社長の胸に顔を埋めた。

大きくて、安心感のある胸の中で、ドキドキだけじゃない安らぎを感じていた。



「俺、社長になってからこんな気持ち初めてなんだ。いつも何かに追われてて、ホッとできることなんてなかった。でも、今は心からホッとしてて、なんだろうな、これ」



ほのかに香る香水の匂いを忘れないように何度も吸い込む。






< 17 / 189 >

この作品をシェア

pagetop