どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
少し不安な気持ちのまま、自分の席に戻る。
すぐに自信がなくなってしまう。
チャットアプリのID検索で、社長を見つけた。
シンプルな空の写真。
KEISHIという名前。
繋がった。
社長と……
嬉しくてさっきの不安は消えていた。
さっそく【小久保です。お疲れ様です】と送ってみる。
その日の夕方には返事が来た。
【神保です。お疲れ様です】
ふふ。
かわいい。
【8時に会社の裏口、車で迎えに行きます】
と来た。
敬語なのもかわいい。
【わかりました】
私は、芸能人と恋愛でもしているかのような気持ちだった。
バレちゃだめ。
誤解されないようにしなきゃって。
そして、
1日に何度か思い出す。
社長の言葉。
『俺に惚れるなよ。俺は決められた相手と結婚させられるんだから』
私のこの恋は始まったばかりだけど、ハッピーエンドではない。
いつか、ドラマのように、好きなのに別れなくちゃいけない。
辛く悲しい結末が待ってるのだと思う。
私は26年間、幸せに生きてきた。
家庭の事情でちょっと悩んだり、行きたい大学に行けなかったり、そんなことはあったけれど、大きな挫折とかはない。
中学、高校は普通に恋もして、当たり前のように失恋も経験した。
大学で付き合った人とは結婚も考えた。
でも、就職活動をしている中で、何かズレが生まれて、最後は結構ドロドロとした状態で別れた。
それ以来、恋愛には臆病になっていた。
はずなのに……
どうしてだろう。
社長には自分の想いを正直に言えたし、突っ走るように飛び込むことができた。