どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
午後8時。
裏口にしゃがみ込み、初めてのデートに胸を膨らませていた。
――プッ
クラクションが鳴り、顔を上げると黒のミニバンが目の前に。
ベンツとか、BMWとかじゃなくて、少し気が楽になった。
社長の車と言えば、外車だと思っていた私。
社長は運転席 から手を伸ばし、助手席をドアを開けてくれた。
「おう」
「助手席でいいんですか?後ろじゃなくていい?」
そう問いながらも私は助手席に座った。
「バカだな。隠れることもないし、堂々としてろ」
冷たい言い方をした社長だけど、その言葉から愛がバシバシ伝わる。
「嬉しい、です」
「俺は、お前の前では社長じゃない。普通の男だから」
車の中は、シトラスのような爽やかな匂いがしていた。
私が玄関に置いているキャンドルに似た匂いだった。
「車、外車じゃないんだね」
「おう、仕事用の会社の車じゃないんだから、自分の趣味で選ぶよ」
「いいですね、この車」
社長は、そうだろ?って言って、嬉しそうに笑った。