どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~

チラっと社長の横顔を見る。

運転している社長を見るのも初めてで、運転している腕や手や……
全部かっこいいなって思う。


「何?」

「なんでもないです」

「正直に言えよ」

「なんでもないですって……んっ」


信号が止まった瞬間、唇を奪われた。


「キスしてほしいって顔してたから」


サラリとそう言って、社長はまた車を走らせた。

ほんの数週間前までは考えられなかったこと。



「何系食べたいとかある?」

「なんでも好きです」

「だろうな。そう言うと思って、もう予約してる。なんでも食べそうだって、思ってさ」


いたずらっ子のように笑った社長の腕をちょっと彼女っぽくつつく。


「食いしん坊みたいに言わないでくださいよ」

「はは。何度かお前が飯食ってるとこ、見たことあるもん」

「えええええ!!」


私と社長は、腕と腕をぶつけて笑い合う。

窓から見える景色は、瞳がうるんでいるせいか、キラキラと輝いてみえた。

大きな橋を渡って
そこから見える観覧車も、船も、全部が夢のようだった。


「無難だけど、イタリアンにした。パスタ好きだろ」


好き好き!と喜ぶ私。

右手でハンドルを握り、左手で自分のあごを触る。

夜になると伸びてくるんだよと言う社長。

いつか、そのひげに触れてみたい。
まだ触れるには勇気がいる。


「ここ、一回打ち合わせで使ったんだけど、結構うまくてさ。お手頃だし、デザートもおいしい」

「わ~い!!嬉しい!!お腹ペコペコです」

連れてきてくれたイタリアンのお店は、気負うほどの高級感はなく、私が安心して入れる雰囲気だった。

これも、社長の優しさ、だよね。

誰かとデートで来たのかもしれない。

でも、打ち合わせでって言ってくれて、やっぱり安心する。




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