どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「社長は、勉強も大変だったの?」
「まー、そうだな。俺、レールの上の人生だからさ。下手なことできない。部活よりも勉強しなきゃいけない。だから、恋愛とかしてる暇はねぇし」
と言っても、きっと素敵な彼女がいたんだろうなぁ。
「社長って、社長じゃなかったらどんな人だったんだろう。社長だから誤解されているところもあると思うんです。全然怖くないし、優しいもん」
私の知っている社長は、みんなが思ってる社長とは違う。
冷徹なんてことないし、厳しいかもしれないけど、それは愛がちゃんとあると思う。
「そんなことねぇよ。やりたくない仕事もやって、親の言いなりで、冷たい男なんだよ。もともと、社長になる器じゃない」
「それはないです!!社長は、立派な社長です!!」
デザートに添えられたイチゴをほおばりながら、つい大きな声が出る。
「ありがとな。そんなこと言ってくれるのお前くらいだよ」
そのちょっと寂しそうな表情を見て、気になっていたあのことを質問した。
「前に話してくれた、お世話になっていた下請けの会社、どうなったんですか」
社長を育ててくれた大事な会社だって言ってた。
「まだ、解決してない。でも……お前に会って、こうして気持ちにもゆとりができて、今までとは違う決断ができるかもしれないなって感じる。すぐには無理かもしれないけど、俺もそろそろ変わらないといけない時なんだよ」
食後のブラックコーヒーを飲んだ社長は、大きく息を吐いた。
ふわっとコーヒーの匂いが届く。
「応援しかできないけど、頑張って。こんなに何もできない彼女でごめんね。アドバイスとか何もできない」
「お前の存在が、俺を支えてくれてる。オアシスって言っただろ?休む場所がないと、戦えないんだよ、男は」
そう言った後に、かっこつけたこと言ったなぁ、俺。って言って笑った。