どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~

店を出て、圭史さんの後ろを歩きながらその背中を見つめる。


「どうした? 」

「いえ」

「俺の横に来い。後ろじゃなくて横を歩くんだよ、万由は」


グイっと力強い腕に引っ張られた、そのまま手を繋がれ、車までの道を歩いた。


キスまでした仲なのに、どうしてこんなにドキドキするんだろう。

手を繋ぐって嬉しいね。



「何時に帰ればいい?」


クーラーの風が圭史さんの前髪を乱す。


「もう大人なんで門限とかないです」

「そっか。でも、あんまり遅くなるとご両親も心配するだろうから、ちょっとドライブしてから送るよ」


本当は今日、ちょっと期待してた。

朝まで一緒にいられるかなって……


だけど、ホッとした。

圭史さんの誠実さが伝わってくる。



相手が社長となると、いろんな余計なことを考えてしまうんだよね。

過去のことや、女性に慣れてるんだろうな、とかいろいろ。


「万由も、夜景が見える場所とか好き?」

「はい。あ、いえ、好き……嫌いじゃないですけど、神社とかの方が好きです」


とっさに変な嘘をついてしまったのは、他の女性とは違うって思って欲しかったから。


「嘘だろ?いや、絶対ないよ。夜景の見える場所でイチャイチャしたり、横浜とかでデートとか女の子はそういうのが好きだって先輩から教えられた」


夜景の見える場所でイチャイチャとか、最高なんですけど……

でも、でも、私はそこら辺の女とは違うの!!


「夜のお寺で肝試しとか、夜景でも工場とかの夜景の方が好きです」

「はははは。万由。お前、面白いな。それにかわいい」

「もう~、笑いすぎです」


「俺、大学時代と、取締役になるまでの数年間、すっげー無駄な時間を過ごしたと思う。言い訳にならないけど、親の言いなり人生に嫌気がさして、生きることがむなしくて……毎晩遊んでた。楽しくもなかったけど、いろんな女性と付き合った」


圭史さんから話してくれるとは思わなかった。
過去のこと。


「いっぱい付き合ったの?」

「そうだな。付き合ってるのかわからない子も何人もいた時期がある。金があるから近づいてくる子もたくさんいたし、女なんて信じてなかった」


モテるに決まってるもん、圭史さん。

お金がなくても、このルックスだったらたくさん寄ってくる。

圭史さんの過去は、知りたいような知りたくないようなそんな感じで、私は、それ以上何も言えなかった。





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