どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「俺は今、34歳で、社長としては若過ぎるし、誰からも認められていない」
私は、運転する圭史さんを見つめながら、話を聞いていた。
その向こうに広がる夜景と圭史さんの瞳はキラキラしていた。
「今は、後悔してる。時間を無駄にしてたなって。遊んでいた分 、勉強したり仕事に打ち込んでおけば、今もっとマシだっただろうな」
「でも、その頃があって、今があるのかもしれない。人生には、ハメを外す時期って誰でもあると思いますよ」
「万由、お前いい女だな。俺を責めないの?」
責めるなんて、できるわけない。
重圧とかハンパないと思うし、その遊んだ時期がなかったら今、ストレスで倒れちゃうかもしれない。
「そりゃ、過去のこと気にならないわけじゃないけど……今の圭史さんが私を好きでいてくれるってことが幸せだから」
「お前ともっと早く出会ってたらな。社長になってからは真剣な恋愛なんてしても無駄だと思ってた。その前もそうかな。俺は、誰かを本気で愛してはいけないって思ってた」
静かに車が停まる。
窓の外には 、綺麗なオレンジ色の光が輝いていた。
「ここ、どこ?」
「工場の夜景が好きなんだろ?俺も嫌いじゃない」
「わぁ、嬉しいです」
目の前に広がる工場地帯の夜景。
工場が好きってのは嘘じゃない。
見えないけど、その夜景の中に働いている人の姿が想像できる。
「万由の愛は信じられる。どうしてだろう。俺が社長じゃなくてもお前は俺を好きになってくれたように思う。今までの彼女は、俺が金持ちだから、次期社長だからってそういう俺の肩書があるから好きになってんだろうなっていう思いがあって」
「私は自分が平凡だから、そんな気持ち感じたことない。でも、なんとなくわかる。本当の自分を好きになってほしいっていう気持ちはわかる」
伸びてきた手が私の手を握る。