どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「圭史さんは普通の家庭で育っても、立派な人になっていた気がする。何か自分で事業とかして成功してたんじゃないかな」
「はは、そんな力、俺にはないよ。勉強嫌いだったし、スポーツの世界とか行きたかったな」
運転している横顔を見つめながら、思う。
圭史さんの心の中には、やりたかったけどできなかったことがたくさんあって、今の人生に不満も不安もいっぱいあるんだろうな、と。
「圭史さんの人生の中に、私が入ったことで何か変わってほしい」
「万由、それだよ。俺が感じたの。俺の人生の中にお前が必要だって思う」
決して、結婚なんて望んでないよ。
ううん。
本当はずっと一緒にいられたら……って思う。
それが結婚ならば、いつか圭史さんとしたいって思う。
でも、そんなことは言わないよ。
重荷にはなりたくない。
圭史さんの荷物を持ってあげたいんだもん。
私自身が荷物になっちゃいけない。
「遅くなったけど、大丈夫?」
「うん、平気。送ってくれてありがとう」
家の前まで送ってもらい、私は車を降りた。
運転席から顔を出す圭史さんに手招きされ、運転席の方へ向かう。
「今日はありがとな」
頭をポンっとされて、もう片方の手を首の後ろに回された。
そして、唇が触れるか触れないかの優しいキスをして、別れた。
静まり返った家の鍵を開け、中に入る。
そこには現実が待っている。