どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「で、コンパどうする?」
「ちょっと今、いい感じの人がいるのでやめときます」
「えーーーー!抜けがけ!小久保も彼氏できたらあたし泣くよ」
圭史さんと決めたこと。
いくら大親友でも大事な人でも、ふたりのことは絶対に言わないこと。
噂になってしまったときに、その人のことを疑いたくないから。
だから、ちょっと子供みたいだけど猫のマロンに時々話すんだ。
圭史さんとのこと。
あれから、一日に一回は圭史さんと話してる。
エレベーターの中、廊下、カフェ。
挨拶だったり、会釈だったり。
夜が遅いことが多いので、電話よりもチャットアプリのメッセージでおやすみって送ってきてくれる。
ウチの会社は輸入関係の仕事もしているので、時差があって夜中に仕事の電話をすることもあるんだって。
知らなかったことがたくさん。
「社長ってのは名ばかりで、俺はまだまだ体使って必死に仕事を取らないといけない」って話してくれた。
今は自社ビルではないけど、いつか自社ビルを建てたいっていう夢も教えてくれた。
大きな翼で大きく羽ばたく人。
こんな一般人の私は似合わない。
こんなに幸せなのに、考えることは……私でいいの?ってこと。
一緒にいると嬉しくて幸せで、そんなこと忘れているのに、離れていると考えてしまう。
私じゃない、って。
私は、何もしてあげられない。
英語も話せない。
経営のこともわからない。
結婚なんてできないけど……
万が一結婚しても、できない嫁って言われるだけ。
オアシスなだけじゃダメなんじゃないかって……
オアシスは受け身だ。
待っているだけ。
体と心を休めに来てくれるのを、ただただ待つだけ。
本当は、体に水をかけて洗ってあげたいし、元気になるようにパワーをあげたい。
オアシスだけじゃ、ずっと一緒にいられないよ。