どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「ねえ 、佐竹」
「ん?」
エッチしたことで、ちょっとため口になる俺。
「私は、人を好きになっちゃいけないんだ」
「どういう意味?」
「あのね。私、あんたのことまだちょっとしか好きじゃないから言うね。私、子供産めないんだ」
同時に、大きな衝撃の事実をふたつ言われた。
俺をちょっと好き?
子供が産めない?
「子供を産めないってことがわかってる女を選ぶ男っていないんだよ」
「それは違う。俺は、今それを聞いても、変わらず吉岡さんのことが好きです」
「今は、盛り上がってるからそう思うの。家に帰って、しみじみ思うの。あぁ好きだけど、やっぱ俺子供欲しいな。って」
腕枕をしながら吉岡さんに目を向けると、目には涙が浮かんでいた。
「それはわかんないです。そりゃ、結婚したら子供が欲しいとは思っていましたけど。だけど、子供が産める別の女性と結婚することよりも、子供が産めなくても俺の好きな吉岡さんと結婚する方が俺は断然幸せです」
「佐竹、どんだけ私のこと好きだったの?」
俺はもう一度キスをして、鼻先をくっつけた。
「吉岡さんが俺を好きな1億倍くらい好き」
「それは、重いわ。はははは」
俺は、すねるように吉岡さんの胸に顔を埋めた。
「俺は、ただあなたと一緒にいたいだけっす」
「かわいいね、佐竹は。でも、子供だよ。まだ……」
「俺、子供じゃないです。ちゃんとわかってる」
吉岡さんは、子供が産めない体だということ。
だから、誰とも付き合おうとしないし、誰も愛そうとしないんだ。
「俺に話してくれて、嬉しかった」
「話す気はなかったんだけどさ。あんたが律儀に避妊してくれたからさ」
ありがとうの意味がわかった俺は、もう一度、吉岡さんの胸に顔を埋めた。
「当たり前じゃないですか。大事な大事な体です。俺の大事な人ですから」
「佐竹のくせに、かっこいいこと言わないで」
「俺は、こんな風に先に体の関係になりたくなかった。遊びだって思われたくないから」
顔をあげると、俺の頭を優しく撫でてくれた。
「わかってるよ。ちゃんと。でも、あんたの相手は私じゃないよ」
このままじゃ終わらない。
絶対に、関係を変える。
吉岡さんはいつも笑顔で、明るくて。
人を笑わせてくれて、人の相談に乗ってくれて。
そんな吉岡さんが誰にも言えない悩みを抱えていた。
俺は、胸の奥が苦しくて、もっともっと吉岡さんを好きになっている自分に気付いていた。
俺が、幸せにしたい。
俺が、心から笑わせたい。
~佐竹SIDE~END