どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「そういえば、海君、どうよ?小久保」
「え?どうって」
「歓迎会の二次会で、営業部で誰がかわいいかって聞かれて、アイツ小久保さんって言ったじゃん。ああいうのって、ズキュンと来ない?」
上司からムチャぶりされた新井君は、私の名前を出してくれた。
それは確かに嬉しいけれど、その先なんてあるわけない。
「安全そうな私を選んだだけですよ。嬉しかったですけど」
「この前も飲んでる時、やたらと小久保の方に体向けてたし、狙われてんじゃない?」
そういうことに敏感ではないけれど、鈍感でもないつもりでいる。
全然アプローチのようなものは感じないから大丈夫だと思う。
「私、好きな人いるし……」
「それ、佐竹と私の間ではもう、都市伝説化してるの。私達にうるさく言われるから架空の彼氏作ってんじゃない?って」
「え~!ひどいです。本当にいるんです。でも、今はまだ言えない……ごめんなさい」
吉岡先輩には話したい。過去のことも知って、よりそう思う。
「吉岡先輩は、佐竹さんの前に本気で好きになった人いましたか」
圭史さんのことを思いっきり頭に浮かべながら質問をした。
「…………」
吉岡先輩はしばらく黙り込んだ後に、小さな声で呟くように言った。
「……社長かな」
社長……
フったのは吉岡先輩の方なのに、どうして。
「……たぶん社長も、吉岡先輩のこと好きだったのにどうして付き合わなかったんですか」
こんな質問をしてしまう自分が嫌だった。探っているようで。
「前に言ったかもしれないけど、私、結婚しない主義なの。というか、恋愛も本気になりたくなくて。当時はそれがさらに強かったの」
「前も言ってましたけど、どうしてそういう風に思うんですか」
「……重い話するけどいい?私のキャラにないこと言うよ?」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
圭史さんの顔が頭に浮かぶ。