どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「あ……それとね、話したいことがあるんだ」
私は言えなかった家族の話をする決心をしていた。
未来のことはわからないけど、私の理想の未来としては圭史さんのお嫁さんになること……
ちゃんと話さないと。
「うちね、ちょっと複雑な家庭なんだ」
真剣な表情になった圭史さんは、コーヒーカップをテーブルに置いた。
「どういうこと?」
「うん。どこから話せばいいかわからないんだけど」
「大丈夫、俺も複雑な家庭で育ってるから、驚かないよ」
伸ばしてくれた手が温かくて涙が出そうになる。
そして、私は小さいときからのことを話した。
お兄ちゃんのこと。
それが原因で学校が辛かったこと。
今、お母さんがうつ病になってしまっていること。
じっくりと聞いてくれた圭史さんは、私が言い終わると左手を伸ばし私の頭に乗せた。
「知らなかったよ…… それは、つらかったな」
涙が出そうになる。
「今もつらいな。そんなつらいこといっぱい抱えているのに、どうして万由は俺をこんなに幸せにしてくれるんだろう。初めて好きだと思ったあの日の笑顔を思い出すと、そんな家庭環境だなんて想像もできない」
「私は、圭史さんと付き合って、幸せな時間が増えて、ほんとにほんとに前とは違う」
「お母さんのこと、どうにかしてあげたいな」
圭史さんは、いつか挨拶に行きたいと言ってくれた。
お父さんにも会いたいし、お母さんにも。
そして、お兄ちゃんにも……
「うつは、そう簡単に治るものじゃない。近くにいる家族も辛いと思うけど、ゆっくり見守るしかないんだよな。万由、話してくれてありがとな」
家に帰って、部屋がぐちゃぐちゃな日があることや、時々泣いちゃうこと、全部圭史さんに話すことができた。
そして、圭史さんも家族のことを話してくれた。
お父さんである相談役は、京都に愛人を作ってそこに子供がいるんだ、と。
その人は、関連会社の次期社長に決まっていて、いつかこの会社に来るかもしれない、と。
ドラマみたいな話に私はただただ驚いていた。
その愛人とは今も繋がっていて、圭史さんのお母さんはそれを黙認し続けている。
だから、そのストレスで何度も体調を崩したことがあるんだって。
私を信じて話してくれたこと、嬉しかったけど、いろんなことを抱えている圭史さんが心配になる。