どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
「今だから言えるけど、あたしは社長のこと、好きでした。相手が社長だから身を引いたわけじゃないんだよね」
驚いた顔をしている社長。
「実は、あたし、子供が産めない体なんだ」
「……え……嘘だろ」
そう言って、社長は泣いちゃいそうな顔になる。
純粋で、まっすぐな人だから、こういう顔をするって思ってた。
困っちゃうよね、優しいから。
「そんな顔しないで」
「ごめん」
「入社してしばらくして、病気が見つかったの。で、手術して子宮を摘出した。だから、子供は産めない。最初からそれを社長に話してればよかったのかもしれないけど、言えなくて。好きって言われた時に思ったんだ。こんな素敵な人の遺伝子を残せないあたしは、この人と一緒にいちゃいけないって」
両手で顔をおおった社長。
深く息を吸って、絞り出すように言った。
「知らなくて、本当にごめん。つらい思いをさせてしまった」
「言わなかったんだから、知らなくて当然だよ。それに、話してたら、社長も別れるに別れられないし、優しいから困るだろうってわかってるから身を引いた」
「何かあるんだろうってことは思ってたんだ。社長と付き合うなんてめんどくさいって言ってたけどそれが本心ではないんだろうなってことは、感じてた。でも、そこから俺は行動を起こさなかった。もう一度、ちゃんと話していたら、吉岡も話せたかもしれないのに」
数年前の記憶が一気によみがえり、涙が出そうになった。
でも泣いちゃいけない。