記憶の花火〜俺が暴いてやるよ、欲望にまみれた秘密を〜
「この紅茶どこの?」

玲子が、ティーカップを持ち上げながら、上目遣いに訊ねた。

「裕介の、病院の上司からのイギリス土産よ」

「通りで美味しい」

「でしょ?」

ティーカップを持ち上げながら、玲子に見せるように結衣は髪を耳にかけた。

「あ!また偶然だ!ラピスラズリのピアス」 

くったくのない笑顔を向ける玲子に、結衣は、不自然な笑顔で返す。

玲子はいつのまにか、自分と同じモノを、身につけているのだ。

なんなら、ティーカップ に口付けている、オレンジベージュの口紅にだってそうだ。

「私達って双子みたいだよね、以心伝心」
「そうだね」

私は、唇の端を無理やり持ち上げた。


ーーーー気づいたのは高校の時だ。

それまでは、消しゴムが同じとかシャーペンが同じとかその程度だったので、気にしたこともなかった。

むしろ、自分が気に入ったモノを、玲子も欲しくて、買ったのかと思うと、小さな優越感があった。
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