記憶の花火〜俺が暴いてやるよ、欲望にまみれた秘密を〜
玲子が帰ってから、結衣は、今夜も食べられることのない夕食を作ってから、庭にでた。

洗濯物を取り込んでから、花壇の植物達に水をあげていく。

いつからだろうか。

この瞬間が、結衣は一番好きだ。植物を見ていると癒される。植物は裏切らない。愛情をかけたら応えてくれる。ずっと、自分のそばにいて、花を咲かせては、こちらに向かって笑っているようだ。


美しく庭を彩る、百合の姿に似た、エンジェルトランペットを、少し膨らんだお腹を撫でながら、眺めた。

夕陽をぼんやりと見つめれば、白いエンジェルトランペットの花弁が、夕陽色に染まっていく。

結衣は、このエンジェルトランペットが、昔から好きだった。

高潔な百合にその姿は似ているが、エンジェルトランペットには毒性がある。

百合の花言葉は「純潔」、その百合をひっくり返したような姿をしているエンジェルトランペットの花言葉は「偽りの魅力」。

偽りの魅力……それは自分の真似ばかりしている玲子にぴったりの花言葉じゃないだろうか。

乾いた土に水をやりながら、エンジェルトランペットが咲きほこる様を見ていると、人間の欲望が満たされて、笑いが込み上げる感情に似ている気がして、結衣は可笑しくなった。


時計を見れば21時をとうに過ぎている。やはり、裕介は帰ってこない。今頃、裕介は玲子を抱いているんじゃないか。そんな気がして仕方ない。

結衣は、気を紛らわすかのように、パソコンの電源を入れた。

何げなく検索をかけてみる。

『秘密 暴く 欲望』

ーーーーすると、一つのサイトに目が留まる。
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