記憶の花火〜俺が暴いてやるよ、欲望にまみれた秘密を〜
「あのー、すみません。スカート探してるんですけど、お勧めありますか?」

レジ台から、振り返れば、自分と同じ歳位だろうか?胸までの黒髪に、綺麗な二重瞼の黒い瞳の女性が、声をかけてきた。

「いらっしゃいませ、スカートでございますね?お好みのデザインやお色味は御座いますでしょうか?」

文香は、始末書を、書く手をとめると、営業スマイルで女性に微笑んだ。


「あ、できればフレアスカートで、麻の涼しい素材があれば。色はお任せします」

「承知致しました」

先日、章介が納品したばかりの、ブランドの新作のフレアスカートの中から、紫とブルーを選ぶと、文香は、女性の待つ、姿見鏡の前まで持っていった。

「わぁ、可愛い」

大きな二重瞼をにこりと細めると、女性は、紫のスカートとブルーのスカートを交互に変えながら、姿見鏡を覗き込んでいる。

「デートですか?」

女性は、少し困惑しながら、小さく頷いた。

「いいですね、私もデートの前はつい新しい洋服が欲しくなっちゃって」

「まだ……付き合って1か月なんですけど……あ、何いってるんだろう……えっと……波多野、さんもお付き合いされる方いらっしゃるんですか?」

女性はチラッと、文香の名札を見てから、訊ねてきた。

見た目は、大きな瞳が特徴的で綺麗な人だ。しかし話すと、何だか子供っぽくて言葉選びが可愛らしい。

女性は頬を染めながら、頬を人差し指で恥ずかしさを紛らわす様に掻いた。

文香は思わず微笑んだ。懐かしい彼女を思い出して。
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