記憶の花火〜俺が暴いてやるよ、欲望にまみれた秘密を〜
第5夜 嘘
あれから1ヶ月。

黒マスクの男の事があってから、花灯は、ほとんど夜、外出しなくなった。

自分の為かな、なんて思って、来未は、慌てて首を振った。

ただ夜、外にいく用事が無いだけ、それだけだ。

ーーーー飼い主と捨て猫の関係なんて。

お昼を食べ終わってすぐに、花灯の呼び鈴が鳴って二階に登った私は、いつものように、窓から、花火屋を後にする、お客様の後ろ姿を見ていた。

30代くらいだろうか?平凡な主婦のように見える。

「平凡ね……」 

窓辺を見るのをやめて、壁を背にして膝を抱えた。今日もいいお天気だ。真っ青な空に、綿菓子みたいな雲が浮かんで、目を細めるほどの太陽の光が降り注いでいる。

平凡。普通。当たり前。全て、誰かの物差しで勝手に区切られたカテゴリーにすぎない。

(じゃあ、殺しは?)

非凡なことでや異常な行為だろう。ただ何らかしらの理由があり、その理由を正当化する為に、殺すのは、正義かと、聞かれたなら、自分は迷わず、正義だと答えるだろう。

世の中には、善人と悪人がいるように、生きててもいい人間と、死んで当然の人間がいると少なくとも自分は、そう思っている。

「来未」

花灯が、襖を少しだけ開けて、自分の名前を呼んだ?

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